ランニングの発汗で塩分がどれだけ排出できるのか調べてみよう

ようやく10km程度のランニングが出来るまでになりました。
そこでふと疑問になったのが汗と塩分の関係。

汗をかくと塩分を排出することは知られていますが、一体どの程度の塩分が減るのでしょうか?
高血圧患者の減塩には摂取量の制限だけでなく排出量からのアプローチもあるはずです。
今回は運動と汗、そして塩分の関係をまとめていきましょう。

汗の塩分濃度は?

残念ながら私には汗の塩分濃度を直接測定する術はありません。ですので一般的な数値を用いましょう。しかし調べてみると数値はまちまちで一定値ではないのです。
これはどういうことなのでしょうか?

実は汗の塩分濃度は変化するため一定ではないのです。
一般的に軽い運動や日常生活では汗の塩分濃度は薄く、大量の汗をダラダラとかくときは濃くなります。

どういうことかというと、汗腺には汗から塩分を再吸収するという仕組みがあるのです。

つまり少量の汗なら塩分が回収されてしまうために汗の塩分濃度は低くなるのです。ところが大量の発汗をすると塩分回収が間に合わなくなります。このときに汗の塩分濃度は上昇するのです。

20150706_salinity_of_sweat_02

運動時の汗の塩分は一般的に0.3~0.9%で変化すると言われています。そしてこの塩分再吸収の仕組みにより日常生活での発汗では塩分濃度は極めて低くなるのです。

この汗と塩分の関係を前提に話を進めていきましょう。

汗の量を測定する方法

さて汗の量はどうやって測定すればよいのでしょうか?
これは簡単です。

運動直前に服を全て脱いで体重を測定します。運動後も同じ条件で測定すれば、体重の差で汗の量が分かります。

20150706_salinity_of_sweat_03

もちろん運動をするのですから消費したエネルギー分軽くなりますが、影響が小さいため無視してよいでしょう。

脂肪1kg消費するには7200kcalの運動が必要
60kgの男性が6kmランニングをすると360kcal消費
360/7200=1/20・・・脂肪1kgのうち1/20を消費する
つまり1/20kg=50gだけ体重が減る

実際はあり得ませんが、脂肪だけを消費して運動したと仮定をしても50gしか減らないというわけです。このため無視してしまいましょう。

実際の汗の量は?

ランニングで早速試してみました。
どのデータも梅雨の合間だったため、曇天で24℃程度と少し肌寒く汗はかきにくい環境です。

データ 走った距離(km) 運動前の体重(kg) 運動後の体重(kg) 体重変化(kg)
1 5.5 62.5 61.8 -0.7
2 6.5 62.4 61.5 -0.9
3 9.6 62.5 61.5 -1.0

※データ3は時速8kmで1時間強のランニング

走った距離は異なりますが、700ml~1000mlの汗をかいたということになります。意外とたくさんの汗をかくのですね。曇天で肌寒い日のデータですので炎天下であればもっともっと増えるでしょう。

排出した汗の塩分量は?

前出の通り運動時の汗の塩分濃度は0.3~0.9%と言われています。
ランニングですので一番低い値の0.3%だと仮定しましょう。
1時間走って1000mlの汗をかいたとき、塩分はどれだけ排出したことになるのでしょうか?

1000×0.3/100=3.0

なんと失った塩分は3g!!
1日6gの塩分制限をしているのに3gも排出できたことになります。

運動時の発汗による塩分排出は想像以上に行われているようです。だからしっかり運動をするときにはスポーツドリンクでナトリウム(塩分)を補充しなくてはいけないということなのです。

なるほどスッキリしました。

スポーツドリンクの塩分量は?

スポーツ時の水分・塩分補給に特化した飲み物ですので、適切な塩分濃度であるはずです。

ポカリスエット

20150706_pocari_01

100ml当りナトリウム49mg →塩分相当量0.124g
つまり1リットル飲むと1.24gの塩分摂取となります。

アクエリアス

20150706_aquarius_01

100ml当りナトリウム40mg →塩分相当量0.101g
こちらは1リットル飲むと1.01gの塩分摂取となります。

つまりスポーツドリンクの塩分濃度は0.1%強しかないのです。
運動時の汗の塩分濃度が0.3~0.9%とすると物足りません。

意外と少ないですね。
これはどう解釈すれば良いのでしょうか?

調べてみると日本体育協会でも運動時の水分補給には0.1~0.2%の塩分濃度を推奨しています。
つまり運動時の水分補給には、「(十分ではない場合もあるが)スポーツドリングは水よりも適している」ということのようです。

スポーツドリンクはCMや販売ルートを見るとお分かりの通り、比較的軽い運動や日常生活に向けて販売されています。足りない分は塩分過多になりがちな普段の食事からという考え方で問題ないでしょう。
このためマラソンやトライアスロンなど長時間ハードな運動を続ける場合は塩分濃度をもう少し高くすると良いと言われています。

運動中にナトリウムが不足すると疲労感、運動能力の低下、痙攣などを引き起こします。それらを防ぐためにもスポーツドリンクは水より有効であるということです。

学生時代にガッツリ運動をしていた頃はポカリスエットを2倍に薄めたものを定番にしていました。「運動中に飲むには濃すぎる」と通ぶっていましたが、実はこれは間違いだったということです。
この歳になって初めて知りましたよ。

経口補水液

ちょっと視点を変えて経口補水液も見てみましょう。
脱水症を起こしたとき、もしくは予防を目的とした飲み物です。

経口補水液 オーエスワン

20150706_os1_01

100ml当りナトリウム115mg →塩分相当量0.292g
こちらは1リットル飲むと約3gの塩分摂取となります。
つまり塩分濃度は0.3%ということです。

これは脱水症が懸念されるほど水分を失った場合、スポーツドリンクよりさらに塩分濃度が濃いものの方が適しているということを示しています。

少し意地悪な見方をすると、塩分濃度が濃い汗を大量にかく人が炎天下に過度な運動をするとスポーツドリンクでは不十分なこともあるとも言えてしまいます。
自分の体質をよく知り、自分にあった水分補給が重要と言えるでしょう。

発汗は個人差が大きい

汗の発汗量と塩分濃度は個人差が大きく、全く汗をかかない人もいれば非常に塩分の濃い汗を大量にかく人もいます。おそらくスポーツドリンクは万人に適するため、また日常からスポーツまでの範囲の広いシーンを網羅しようとしているためにこの薄めの塩分濃度になるのでしょう。
プロスポーツでは個人の特性に合わせた成分・量で水分補給を行っています。私達も自分がどのような特性の汗をかくのか自覚しておく必要があるようです。

20150706_salinity_of_sweat_04

塩分濃度は自分では把握しづらいですが、汗の塩分が濃い場合は服に白く塩の跡が残る、汗が目に入るとしみると言われています。また汗にナトリウムなどのミネラルを多く含むため触るとベトベトする傾向があります。

一度自分の発汗の特性をまとめてみましょう。

私の発汗特性は?

私の発汗量は人一倍多いと言えます。
ラーメンや辛いものを食べると大粒の汗をダラダラかいてしまう程なので、もはや多汗症と言ってもいいでしょう。夏場外出先で仕事仲間と食事をするときは、汗を気にして冷やしたぬきやもりそば等の冷たい料理を選んでしまうほどです。

また減塩中でも暑い日に半日歩き回ると黒いインナーに塩の跡が残ります。しかし汗が目に入っても「しみる」というほど不快ではありません。
ちなみに運動中の汗を舐めてみましたが、わずかに塩っぱいです。塩分は確かに汗とともに排出されているようです。

発汗量の多い人は必然的に塩分濃度の濃い汗になるという仕組みがありますので、私の場合も塩分は濃い傾向があると考えていいでしょう。

これらをまとめると私の場合は

発汗量:非常に多い
塩分濃度:やや濃い

といった感じでしょうか。

20150706_salinity_of_sweat_05

汗をかきやすいために恥ずかしい思いをたくさん経験してきましたが、高血圧患者の減塩的には大きな武器になりそうですね。日常的にたっぷり汗をかく運動を続けていれば塩分を排出しやすい体質だと言い切ってしまっても問題ないでしょう。

これなら夏場は多少塩分を多めに摂取してもうまく排出できそうですね。また寒い時に大量に発汗する方法が見つかれば、高血圧に厳しい季節の減塩が楽にできることにもなります。今のうちにいろいろ考えておかないといけませんね。

悩みの種だった汗っかきの体質がこんなところでメリットに化けるとは夢にも思いませんでしたよ。

まとめ

  • 汗の塩分濃度は日常生活での発汗では薄く、運動などで大量に発汗するときに濃くなる。
  • 大量発汗時にはスポーツドリンク等で水分とともにナトリウムの補充が必須。運動をしていても大量発汗でなければお茶や水など塩分を含まない飲み物で十分。
  • しっかり運動をして大量の汗をかき、スポーツドリンクで補充をしていても体内の塩分は減る。つまりこの場合でも減塩効果がある。
  • 逆に日常生活での穏やかな発汗であるならスポーツドリンクは塩分の過剰摂取になる。
  • 運動をするなら発汗量に合わせた水分補給だとても大事。運動前後に体重を測定することで自分の発汗量を知っておこう。
  • 私の場合、1時間で10kmほど走ると1リットルの汗をかき、3g程度の塩分を失う。
    また、しっかり汗をかく運動をするのであれば塩分を排出しやすい体質と言える。
  • 運動や季節で塩分排出量が大きく変化するのに、塩分摂取を一定値に制限してしまうのは体の仕組み的におかしい。臨機応変に対応すること。
  • 冬場も大量発汗が出来る方法を今のうちに考えておこう。

汗と塩分の関係、スポーツドリンクの扱い、そして自分の体質を確認する良い機会になりました。
皆さんも自分の場合はどうなるかを是非調べてみてください。

もうすぐ夏が来ます。
炎天下での発汗量も測定したいと考えていますので、こちらも乞うご期待を。

※2015/07/16追記
炎天下でも測定してみました。

ランニングの発汗で塩分がどれだけ排出できるのか調べてみよう【炎天下編】

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コメント

  1. ケイ より:

    初めまして、

    血圧を下げる目的で、半年ほどダイエットを行い一段落ついたので、ジョギングや減塩にも取組んでいます。amaoさんとは、年齢は一回り上、生活環境も大分異なっていますが、血圧コントロールに関する、本ブログの記事は大変参考にさせて頂いています。

    とはいえ、「ランニングの発汗による塩分の排出」という視点とその詳細な分析には、驚きました。素晴らしい!

    • ameo より:

      ケイさん、こんばんは。
      管理人のameoと申します。
      コメントありがとうございます!

      「高血圧には減塩」というアプローチが当たり前にはなりましたが、それなら「汗をかいて脱塩」という方法も有効だと思うのです。
      減塩を実際にやってみると痛感するのですが、塩分1食2gで栄養バランスの整った食事を用意することはとても大変です。
      外食ではほぼ不可能でしょう。
      であれば運動をセットにして程よい塩分の食事を摂取したほうが生活の質を落とさずに済みます。

      問題は医療サイドがどのような反応をするかですよね。
      医学的エビデンスがないため、医師からは「汗をかいているから6g/日の塩分制限を緩めましょう」とは言い難いのではないかと推測します。
      血圧だけでなく血液検査や血管年齢を自分で管理しつつ、自己責任でやっていくしかなさそうです。

      • ケイ より:

        返信ありがとうございます。

        確かに一日6gというのはキツイです。私は糖質制限ダイエットを継続していますが、糖質の制限に気を取られるあまり塩分過多に気がまわらず、最近まで冷や奴に醤油じゃぶじゃぶ、というとんでもない事をしていました。何事もバランスが大事とですよね。

        米国では一般人は5g、高血圧の人は2gと推奨されているようで(本当に守られているのか?、は疑問ですが)、日本の基準は緩いらしいので、「汗をかいたから、基準をゆるめても良いよ」とは言いにくいかもしれませんね。

        • ameo より:

          あー、私と真逆ですね。
          当初は減塩のためにオカズを減らして主食を増やすという方法を取っていたため、思いっきり糖質過多の食生活でした。
          遺伝的に弱いこともあり、案の定糖尿病一歩手前と警告されています。
          糖尿病も厄介ですので勘弁です。

          日本人は食文化が高塩分だったこともあり、世界的に見ると塩分には強いようですね。
          長い年月をかけて塩分に弱い人が淘汰されていったのかもしれません。
          私も危うく消されるところでしたよ。

  2. いやっほう より:

    発汗量の推定のための体重差分計測では、裸で行われましたか?
    服は汗は吸って重くなりますので・・・。
    余計な心配でしたらすみません。

    • ameo より:

      管理人のameoと申します。
      コメントありがとうございます!

      もちろんランニング後の体重測定も裸です。

      この記事を書いてから3年、走る距離も延び、毎日10kmときには20kmほど走ります。
      暖かい日であればランニング前後で体重が-2~3kgという感じでしょうか。
      このおかげでしょうか、あまり減塩を気にしなくてもよい体になっています。
      脱水症のほうが心配なくらいです。

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