脳出血を発症した私の運転免許更新体験記

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私は脳出血を発症してちょうど1年経ったタイミングで運転免許の更新を行いました。後遺症がほぼ解消できていると自負していたため楽観視をしていたのですが、それでも実際に体験してみるといろいろなトラブルがありました。

それらもまとめておきましょう。
皆様の運転再開チャレンジの参考にして頂ければと思います。

①直前まで運転再開に適性検査が必要だということを知らなかった

免許更新を案内するハガキが来ていたため、今回もささっと更新してしまおうと考えていました。後遺症もほぼ解消されていたので、私の場合は今までと同じように警察署で更新すれば良いと思っていたのです。

ところが、最近改正された道路交通法を眺めていて、たまたま脳卒中経験者は適性検査が必要になるということに気がついたのです。

病院でその話をしてみると、退院時に免許に関する案内があったはずと言われたのですが、全く身に覚えがありません。そもそも退院後の生活指導すら受けていませんし。
急遽退院をした経緯があったため、その辺りの指導や案内がスッポリ抜けてしまったのかもしれません。

ということで、徹底的に自分で調べてから免許更新に臨みました。

②診断書を書いてもらえなかった!

運転を再開するためには適性検査に合格するとともに「運転を控えるべき、とは言えない」という内容の診断書が必要です。私の場合は極めて順調に回復し、通院も実質終了していたため、間違いなく「問題なし」という診断書を書いて頂けると思っていたのですが……。

主治医の先生に「免許更新が近いのでこの診断書に記載をお願いします」と用紙を差し出したのですが、受け取ってもらえなかったのです。

先生曰く、「運転が可能かは運転免許試験場の適性検査で確認するものだから、医師が先に運転可と判断することはできない。先に適性検査を受けて下さい」とのことでした。先生が勘違いをしていることに気付いてはいたのですが、押し問答になりそうだったためその日は一旦引き下がりました。

この件を運転免許試験場に相談すると「そういう話であれば先に免許更新と適性検査を受けて下さい」とのアドバイスをしてくれました。免許更新には期限があり、一度失効となってしまうと更にややこしい手続きが必要になってしまうためです。加えて、ほぼ後遺症がなく通院も終了しており、運転に間違いなく支障がない(と考えている)ことを伝えていたこともその理由として挙げられるかもしれません。

つまり、正規の手順とは異なり、免許更新と適性検査を先に行い、後日診断書を提出するという順番で行ったのです。

このため、運転免許試験場で

・診断書を○月○日までに提出する
・免許が交付されても診断書の内容が確認できるまでは運転不可

という2つの約束をしています。

主治医の先生には「検査は問題なし」の報告をしてから診断書を書いて頂き、後日受け取った診断書を郵送で試験場に送ることで一件落着です。
こうして私の免許更新手続きは終りました。

試験場の担当の方にうががったところ、こうした診断書がらみのトラブルは良くあるそうです。例えば後遺症がないからと運転を継続していて、免許更新時に診断書を求められたが「なにそれ?」という方もいたり。
運転再開の正しい仕組みは、医療サイドだけでなく患者サイドにも周知されているとは言えないようです。

また、面談時に病院から患者の運転再開に関する問い合せがあったことも教えてくれました。おそらく、私が運転再開を申し出たことがキッカケとなり、病院もいろいろ調べていたのでしょう。
これにはお世話になっている病院がリハビリ病院ではなく、救急指定病院だったという特殊な事情もあるでしょう。脳卒中発症後は容体が落ち着くと普通はリハビリ病院に転院しますが、私は救急指定病院から直接(強引に?)退院しています。そのためにリハビリ維持期になっても救急指定病院に通院するというあまりいないタイプの患者だったのです。そんな事情もあり、病院も医師も患者の運転免許再開に関しては経験が少なかったのでしょう。

このようなトラブルも実際にありますので、困ったことが発生したら一人で悩まずに運転免許試験場に相談することをオススメします。

③当日の手順は

私は免許更新と同時に適性検査を受けました。手続きは申請書を書くことから始まり、視力の確認を終えるまでは一般の方と全く同じです。

視力検査を終えたタイミングで、申請書の裏の「一定の病気など」に関する質問票に該当する人は別室「運動能力検査室」に案内されます。そこで面談を、そして運転シミュレーターを使った適性検査を行います。

なお、私は何度も電話で相談をしていましたが、適性検査の予約をしていませんでした。予約を求められることはありませんでしたので必須ではないようですが、混雑する日や機材の用意のことを考えると予約を入れておいたほうがお互いのためになるのではないかと思います。

適性検査で問題なしと判断された後は、また一般の免許更新の続き、すなわち写真を撮り講習を受けた後で新しい免許を受け取ります。

つまり、基本は一般の方の免許更新と同じ手順であり、視力検査の後に「一定の病気など」に関する適性検査が追加されただけということです。

④私が経験した適性検査の内容は?

さて、肝心の適性検査の内容ですが、面談の結果、「視野欠損を確認する高次脳機能障害の検査をします」と告げられました。つまり片麻痺に関する検査は必要なしとされたのです。普通に歩いていたり、右手で文字を書いていたり、ステップ踏んで「毎日走ってますよ」とアピールしたりした結果でしょうか。

その高次脳機能障害の検査とは、運転席を模した装置に座り、正面に映しだされた運転中の動画のどこかに赤い点が表示されるので、それを見つけ次第、即座にクラクションをならすという内容です。これが5分程度続きます。視野欠損の場合は特定の範囲を認識することができなくなるので、それを調べるための検査です。

視野欠損がなければ一見簡単そうな検査ですよね。
ところがどっこい、これがなかなかの曲者でして・・・。

実際に体験してみると視野欠損の確認だけではないことに気づきます。
画面に映される運転中の動画は街中のシーンが多いのですが、前の車が危ない動きをしたり、車間が妙に狭かったり、自転車がふらふらと走っていたりと、危機感を感じるシーンが盛りだくさんなのです。
事故寸前のヒヤリまではいきませんが、それを予見させる内容です。運転をしていた人にとってはそれが気になります。もとい、どうしてもどうしても気になってしまうのです。免許取り立ての人の助手席に座らされているような、不安であれこれ言いたくなる気分になるのです。

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例えば、この画像であれば、

・軽トラックのフロントタイヤが右を向いているからウインカー無しで動き出すかもしれない。
・一方通行の看板が立て続けにある複雑な道だな。
・見通しが悪い交差点で飛び出しがないか心配。
・自転車が2台、道路の真ん中を走ってきている。
・交差点内にスクーター止めないで欲しいなぁ。
・奥の信号は赤だな

など、運転をしていると気になる要素がたくさんあるのに、左上にこっそり点灯する赤い点に気づくことができるか、というものです。

つまり、この検査は視野欠損だけでなく、脳のマルチタスクの機能を確認するものでもあったのでしょう。

高次脳機能障害にはマルチタスクが苦手になるという症状もあります。同時に2つのことを考えることができなくなるのです。その症状がある方は1つのことを考えるとそれまで考えていたことがスッポリ抜けてしまいます。高次脳機能障害の影響でマルチタスクが苦手な人は前の車に注意を払うだけで赤い点のことを忘れてしまうのです。

私も退院直後はマルチタスクが苦手という症状がありました。文節ごとにしか考えたり記憶したりすることが出来ないため、文章の始めと終わりで意味がつながらなかったり、「の、が、は」など文節を繋ぐ助詞がめちゃくちゃになったりと大変に苦労したのです。
そして何かを他人に説明するときも、何をどこまで話したか忘れてしまうため、同じことを繰り返したり話が飛んだりするのです。これは脳のマルチタスクができていないことが原因です。
当時であればこの検査は合格出来なかったのかもしれません。こうして振り返ってみると免許更新がこの時期で良かったなという思いが湧いてきます。ラッキーでした。

そして、私の検査結果はこちら。

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前の車の動きに気を取られて危うく1箇所見落としそうになりましたが、なんとか取り繕っていることが分かります。ピンク色の「無反応」ではなく、赤の「2」という区分まで遅くない、という評価です。緑黄赤という信号機と同じ配色ですので、おそらく黄色は「要注意」という区分でしょう。
何度か繰り返された同じ場所の点灯にも正しく反応できているので、視野欠損でもないと判断されました。

合格の基準が満点なのかはわかりませんが、微妙な結果として運転免許本部預かりになることもなく、当日その場で免許が交付されています。

このように運転適性検査は片麻痺などの運動能力の確認だけではありません。検査では「たまたま見落としただけ」ではダメなのです。そこもしっかり問われています。
心してチャレンジしましょう。

⑤衝撃の免許証

おまけ。

これは体験談とは言えないのですが、その日一番驚いたのは受け取った免許の写真を見た瞬間です。

「えっ!? 誰だよ、このオッサン!!」

頬がこけ、ほうれい線が出ている老けたオッサン。
それは私でした。

前回の免許更新から5年、体重が25kg程度減っていますのでもう別人です。血圧を下げるために痩せなくてはいけないという事情があったとはいえ、自分でも素直に受け入れがたいほどの変化があったようです。

パンパンに太っていた人が痩せるとどうしても皮が余ります。このために痩せるとシワが増えて老けて見えるのです。前回の免許と並べて見るととても5年という老け方ではありません。15年くらい一気に老けたという印象です。太っていたほうが若く見えるというのは本当ですね。

これには免許を受け取った喜びも一瞬で吹き飛ぶほどの衝撃を受けました。
みなさまも覚悟しておきましょう。

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コメント

  1. ath より:

    私の場合、退院した月が免許の更新月だったので随分とあたふたしました。何せ出来て間もない規則だったので、近所の警察署で聞いたのですが、よくわからないので運転免許試験場で聞いてくださいと放り出されました。でもさすがの運転免許試験場、そういう相談窓口が用意されていましたね。ただ、規則は出来たものの運用ではまだ揉めているみたいで、うちの試験場では、が前に付く説明だらけでした。

    私の場合は、ですが、相談行った窓口で適性検査して、これなら大丈夫ですので、更新手続きを終わらせてから、なるべく早く医師の診断書をもらってください、と用紙を渡されました。

    そのあとの更新講習でちょうど脳の病気についての法改正の話がありまして、改正以来既に数千人レベルで運転を止めている、と、伺いました。大半が認知症だそうで。逆にいうと、それだけ運転するには危険な人が野放しにされていた、ということのようです。危険だと判っていても法の定めが無ければ手を出せませんからね。

    そういう点では自分から相談に来るような人は大体が大丈夫なんだそうです。本当に危ない人は自分が病気だと認識できない人だそうで。

    • ameo より:

      コメントありがとうございます。
      管理人のameoです。

      私も警察署で診断書の用紙を頂こうとした際、「これ・・・かなぁ、これ渡していいのかな?」と署員の方もよくわかっていないようでした。
      やはり試験場に相談するのが一番です。

      自分の運転能力を心配している人は運転再開が可能になる傾向が高いという話、私も聞いたことがあります。
      自分の状態や能力を理解しているからこそ安全運転ができるのですよね。
      ただ、正しく認識/判断できるが故に、僅かな障害でも諦めてしまう人も多いのだとか。

      そういう意味でも「全然大丈夫さ」と医師や家族の忠告を無視して運転する人が一番危険なんだそうです。
      昨今の事故でもそういう人は虚偽報告で免許更新をしていますよね。
      本当に必要な人が検査を受けてくれない、というなかなか難しい話です。
      現在の道路交通法でも万全ではありませんので、運用しながら厳しくなったり緩くなったりして着地地点を決めていくのでしょう。

      そんなことをしているうちに自動運転技術が追いついてきそうですね。
      私達の老後に間に合うと嬉しいのですが、どうなるやら。

  2. 0351918 より:

    診断書は、必ずしも事前に必要ではありませんでした。電話での本人状況確認にて、必要可否の判断をしてくれました。
    適性検査後、医師の意見も必要な結果となった者だけが提出を求められます。

    • ameo より:

      返信が遅くなり申し訳ありません。

      都道府県の公安委員会により診断書の重要性も違うのですね。
      私の免許更新では診断書があることが前提で適性検査が行われていました。

      やはり各都道府県の公安委員会に相談して判断を仰ぐ必要がありそうですね。

  3. のんほい より:

    都会は大変だなぁ。その内容じゃその時点で落ちたかもwww
    私も退院後1年後でしたが実質ハンドル操作の確認だけでした。
    適性検査は運転適性だけなので運動マヒのチェックはしません(それは病院)
    AT以外外されましたがおかげで助かりました。

    • ameo より:

      えー、そうなんですか。
      担当してくれた方のとても柔らかな物腰とは裏腹に
      時折要点をグサリと突いてくる質問にビビリまくりでした。
      こりゃ本気ださんとマズイな、と思うくらいに。

      運転の可否は各都道府県の公安委員会の判断に任せられているのですから、
      対応にも違いがあるのでしょうね。

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