乾麺を茹でると9割の塩分が抜けるは本当か?

うどんや蕎麦は製麺時にグルテンを形成してコシを持たせるため、相当量の塩が使われています。
塩分制限をしている人にとって麺類に手を出せなくなるということは料理のバリエーションの一角を失う大事件です。

しかし乾麺は茹でると塩分のほとんどが抜けるといううれしい情報もあります。
今回はこれについてまとめていきましょう。

乾麺の塩分

まずは茹でる前の塩分についてまとめていきましょう。

データはこちらから。

食品成分データベース(文部科学省)
http://fooddb.mext.go.jp/index.pl

乾麺100g当りの食塩相当量

食塩相当量(g)
うどん 4.3
そば 2.2
そうめん・ひやむぎ 3.8

乾麺は100g程度が1食分ですのでそのまま比較しましょう。
これは麺だけの塩分でありツユなどで味付けをしなくてはいけません。
食塩相当量を1食2gで制限をしていると手が出せない塩分量です。

しかし茹でると麺の塩分は抜けるのです。

乾麺の塩分は茹でると9割抜ける?

まず日清製粉のWebサイトを見てみましょう。

日清製粉 お客様窓口

Q:乾麺(うどん、そば他)を茹でると、麺の中の塩分はどれくらい茹で湯に溶け出しますか。
A:標準方法(表示)で茹でた場合、9割程度の塩分が湯に溶け出します。

と記載されています。

このように一般的に乾麺は茹でた際に塩分の大部分が茹で汁に溶け出ると言われています。

9割抜けるのであれば乾麺時の食塩相当量4.3gが茹で上がると0.43gになるということです。
これなら塩分制限をしていても食べることができそうです。

食品成分データベースに茹でた後の塩分データもありますので比較してみましょう。

食塩相当量(g) 茹で後の食塩相当量(g) 塩分排出率(%)
うどん 4.3 0.5 87.6
そば 2.2 0.1 94.1
そうめん・ひやむぎ 3.8 0.2 94.3

確かに90%程度塩分が減っています。
一番塩分が多いうどんでも0.5gなら問題なく減塩料理としてつかえますね。
しかし詳しく調べてみると、どうも違うような・・・。

数字に騙されてはいけない

既にお気づきの方もいるとは思いますが、食品に関する一般的な基準は「100g当り」です。
じつは茹でたあとも100gで換算されているのです。
100gの乾麺を茹でて240gになっても、そこから100gだけ取り出して塩分を測定しているのです。
単純に比較できるものではなかったのです。

100gの乾麺を茹で、そのまま塩分を測定するとこのようになります。

食塩相当量(g) 茹で後の食塩相当量(g) 塩分排出率(%)
うどん 4.3 1.3 70.4
そば 2.2 0.3 84.7
そうめん・ひやむぎ 3.8 0.6 84.7

9割減るというのは大げさで塩分は茹でると70~85%減るというのが正解です。

これは単にデータベースを見る時に間違えやすいということではなく、乾麺のパッケージにも同じように記載されています。

20150405_kanmen_02c

「ゆであげた後のナトリウム100gあたり・・・!?」という誤解しそうな文面は置いておいたとしても、こちらも茹でて2.4倍になったと仮定すると、80%の塩分が流れでて残りの20%が残ります。
食塩相当量に換算すると茹で上がった後の塩分は0.73gとなります。
ここでようやく上記の標準的なうどんより塩分が少ないということがわかります。

このように乾麺は塩分を知りたい人にとっては大変わかりにくく誤解を招きがちな表現が多いのです。
まだこうして茹でた後の塩分を記載してあれば計算もできるのですが、それも書いていない商品も多くあります。
その際に「9割減るらしいから~」と安直に計算してはいけないということです。

ところが乾麺は塩分量が標準的でないものが多い

20150405_kanmen_04

標準的なそばやそうめん・ひやむぎの茹で上げ後の食塩相当量は0.3~0.6gとまだまだ少なく、十分減塩食として活用ができます。
標準的なうどんは麺だけで食塩相当量が1.3gあり、このうどんだけを注意すれば良さそうです。

と、お思いでしょうが実は話はもう少しややこしいのです。
実際の塩分量は麺の種類ではなく、その製法で極端に変化します。
同じうどんでも塩分量が全く異なるのです。

例えばうどんをスーパーで調べてみると乾麺状態で0.9~5.8gと大きな差があります。
そばも十割そばの0gから3.7gとまちまちです。
標準的な成分として塩分が少ないとされているそうめんやひやむぎも、4.3gとうどん並みに塩分が多いものもあるのです。

では私達はどうすればいいかというと、残念ながら一つ一つパッケージの成分表を確認して判断していくしかないのです。
そして茹でて塩分が抜ける割合も70%程度と悪目に見積もって計算するのです。

すなわち麺を食塩相当量を1g以下にしたいのなら乾麺状態100gで

食塩相当量で3.34g
ナトリウム量で1.3g(1300mg)

が目安になります。

非常にすっきりしないやり方ですが、早めに塩分が少ないお気に入りの商品を探しだすしかないでしょう。

一番のオススメは単純明快なパスタ

20150405_kanmen_03

実はパスタは乾麺状態で塩分を使っていません。
塩分ゼロなのです。

食塩相当量(g) 茹で後の食塩相当量(g)
マカロニ・スパゲッティ 0 1.0

パスタ類は通常は茹でる際に鍋に塩を入れるため、うどん類とは逆に茹で上がりに塩分が加わります。
この塩を入れる理由としては以下の様なことが言われています。

  • 麺に塩味をつける。
  • 沸点を高めて麺の食感を良くする。
  • 麺のタンパク質が逃げ出さないため美味しくなる。
  • コシが強くなる。
  • 麺がくっつきにくくなる。

など、いろいろな説が言われています。
未だにたくさんの説があるということは万人が実感できるほどの違いは無いとも言えてしまいます。

私も実際に塩なしを試してみたのですが、ほとんど違いはわかりませんでした。
それ以来、パスタを茹でる際には塩を一切入れていません。
入れなくても美味しくいただけるのです。

この塩分ゼロのパスタは減塩料理のベースとして大変便利に使えます。
是非一度塩なしパスタを試していただき、違いが気にならなければ塩をなくしてしまいましょう。

2015/08/27追記 塩分計を購入してそうめんの塩分変化を実測してみました。こちらも是非参考にしてください。
そうめん「揖保乃糸」を茹でるとどれだけ塩分が抜けるのか確認しよう

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コメント

  1. Hiroyuki より:

    初コメです。「スパゲティを茹でずに調理する」レシピを考案中に貴ブログを参考にさせて頂きました。COOKPADで検索すると出てきます(自分のブログにも載せました)。

    ところで、
    日清フーズのHPの「9割」云々は事実なのか、私も気になり、問い合わせメールを送り、電話で回答を得ました。水に「さらす」と9割抜けるそうです。「じゃあ、「さらす」ってことをちゃんと書かないとダメじゃないか!(怒)麺は茹でた後、必ず「さらす」のか!」とも言えず、「参考になりました(笑)」と軽く流しました~。

    • ameo より:

      Hiroyukiさん、はじめまして。
      管理人のameoと申します。

      コメントありがとうございます!

      いろいろな種類がある乾麺をひっくるめて「9割程度の塩分が湯に溶け出します。」と言い切ってしまうのは、かなり無理があるなぁとは思っていたのですが・・・。
      最後に流水でしめるのが一般的なひやむぎやそうめんならまだしも、それでも「湯に溶け出る」わけではないですしね
      食事療法として減塩を頑張っている人の命がかかっているのですから、もう少し丁寧に扱って欲しいですよね。
      情報感謝です!

      サイト拝見しました。
      いろいろと楽しそうなことしてますね。
      私もパスタのラーメン化やってみたかったのですが、重曹にナトリウムが含まれているため諦めました。
      減塩とは言いますが、私達が避けなくてはいけないのは実は塩に含まれるナトリウムなんですよね。
      この重曹パスタで減塩ラーメンが作れるかな、なんて期待したのですがガッカリです。
      減塩ラーメンはいつかチャレンジしたいと思っています。

      また何が面白い情報がありましたらお気軽にドンドンコメントください。
      待ってます!!

  2. たたら より:

    こちらも興味があってみました
    無塩乾めんがあるようです
    (製造時に食塩不使用)
    実際に食べましたが、美味しいです(個人の感想です)
    実際にある病院の看護師さんに紹介しています。

    • ameo より:

      たたらさん、どうもです。

      無塩乾麺といえば身近なものではパスタと十割蕎麦ですが、今はいろいろ市販されているようですね。
      気になってはいるのですがまだ試したことがないんですよ。

      というのは真の問題は麺の塩分ではなく、汁や味付けの塩分なんですよね。
      納豆やバター胡椒だけでは飽きてしまいますし。
      いろいろ試してはいるのですが、なかなか「これだ!!」というものがなくて・・・。
      なにか良いアイデアなどありましたら是非教えてくださいね。

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