2014/12/27 その日は突然やってきた(後編)

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病院到着

15分ほどで病院到着。
診察を受けながら、せっかく着た服を数人がかりでひん剥かれて入院着に着替えさせられる。

右手の麻痺
右足の軽い麻痺
聞くこと考えること話すことに障害があり、コミュニケーションに苦労すること
ろれつが回っていないこと
声が極端に小さいこと

診察をしながらこの辺りは自分でも認識できた。
瞳孔や血液検査の結果は分からない。

診察も先生の問いかけは少し時間を掛けないと理解が出来ず、どうしても会話に間が出来てしまいます。
しかもそのときに周囲で話す人がいると、その話に意識を持っていかれて何を考えていたか分からなくなってしまうのです。
たとえば先生に「午前中はなんともなかったでしょうか」と聞かれても、その直後に横で「ハイ点滴打ちますよーちょっとイタイですよー」、向こうで「この荷物どこ置いたらいい」という会話をされてしまうと、もうなにを聞かれていたのか分からなくなるのです。
「・・・すいません。もう一度言ってください。」
診察はなかなか前に進みません。

診察の途中でCTスキャンを撮影。
頭をCTスキャンした後で、頭以外のレントゲンも数枚撮影。
その後、先生より「脳内で出血している」と告げられ愕然とした。
脳出血だ。

当時は脳出血に関する知識はないものの、血液に圧迫され一度死んた脳の機能は戻らないということは何かの本で読んだことがあった。
多分この状態から戻らないんだろうなと薄々感じた。

そんな落ち込む私に対して医師の一人が「まあ3日は入院だね」と軽い口調で声をかけてくれた。
今思うと脳出血はそんな簡単に治って退院出来るものではないので、うなだれる私を元気つけようとしただけなのだろうと解釈している。
確かに今の自分の体に起きていることすべてが分からない、まともに考えることも理解することも出来ない、そんなパニック状態だったのでその言葉が嬉しかったのを覚えている。

集中治療室(icu)に入る

集中治療室に運ばれた。

手術はなし。
脳出血の場合は頭蓋骨を開く手術は稀で、脳に溢れた血が引きやすい環境にするのが主な治療となるそうです。
このため実際の治療は点滴がメイン。
点滴に血圧を下げる薬を加え、血が脳に溜まらないようにするとのこと。

左手から点滴。
点滴の装置には注射器がセットされており、そこで微量な薬が加えられています。
おそらくこれが血圧を下げる薬。
右手には30分おきに自動で血圧を計る装置。
この装置は脈拍も常に測定しており、鼓動に合わせてピッピッと結構大きな音で鳴り続けます。
さらに右手には血糖値を測定する装置。
ベットの脇にホース付き尿瓶も用意されており、お小水程度ならベットに寝たまま自分一人で出来るようになっています。

このまま絶対安静です。

出血が止まるか。
出血した血液が引くか。
脳の機能がどれだけ生き残るか。

これらがキモになるとのことです。
後は祈ることしか出来ません。

時折名前や生年月日を聞かれたり瞳孔をチェックされます。
症状が進行していないか確認しているのでしょう。

血圧を計る装置は30分毎の自動測定の後にけたたましくアラートがなり、看護師さんが止めに来ることが多く、これが非常に不安を煽りました。
寝ているところから数値が見えないので何が起きているのかわからないのですが、おそらく血圧が異常値だったのでしょう。

コミュニケーションが取れない

そのままじっとしていると、消灯時間の9時が近づいてきた。

コンタクトレンズを付けっぱなしだったので、看護師さんを捕まえて荷物の中からコンタクトケア用品を取り出してもらう。
左手が動くので自分でやろうとするもやらせてもらえず、目からはずしたレンズを看護師さんに渡しケースにしまってもらうことになった。
コンタクトレンズは左右で異なるため、そのときに「レンズケースの右左を間違えて入れていないか見せて欲しい」、そう表現して手を伸ばしたつもりだった。
しかしこれがうまく伝わらず、レンズケースを奪い取ろうとしたように思われてしまい「大丈夫だから!大丈夫だから!」と看護師さん数人をバタバタと慌てさせてしまった。
慌てさせてしまったことに自分もビックリする。
確かに、「・・・・ひだり・・・・・マーク・・・・」と小声でブツブツ言いながら手を伸ばしたのでそう見えたのかも知れない。
人とコミュニケーションが取れないということを痛感した。
この一件でひどく落ち込む。

不安で眠れない夜

9時を過ぎて明かりが消える。
しかし脈拍を告げる音と30分毎の血圧アラートが気になって眠れない。
同じicuには他にも3名ほど患者がいるらしく、その方たちの測定機器の音も加わり非常にうるさい。
とても寝れる環境ではない。

そして視界から動くものが消えると、どうしても今日の出来事やこれからのことを考えてしまう。

なんでこんなことに・・・
これからオレどうしたらいいんだ。

そもそも明日起きれるのだろうか。
血が止まらなかったらこのまま死んでしまうかも知れない。

生きていても、どのみちオレの人生コレで終わったんだろうな。
誰かに世話をしてもらいながらでないと生活してはいけないだろう。
それはつらい。

今の自分はまともに考えることが出来ていない。
じゃあ自分の気持ちだと思っているモノは一体何?
今考えているのは誰?

そんなことを混乱する頭で繰り返し繰り返し考えていたら、悲しい感情も本当のものかわからなくなっていた。
嗚咽するわけでもなく、むせび泣くわけでもなく、なぜか無表情のままで涙だけがぽろぽろ流れた。

「そうか、オレ壊れちゃったんだな・・・」

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