食品のパッケージに記載されている成分表。
工場で作られお店で販売されている食品には、食品表示法により成分表の掲載が義務とされています。
外食は表示義務の対象外ではありますが、サービスの一環としてメニューに成分表が掲載されていることが多いですよね。
この成分表、十分に活用できていますか?
エネルギーと食塩相当量(ナトリウム)は単純明快です。
しかし、三大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物の量はどうでしょうか?
記載されている数値を見ただけで「これは脂質が多い」「いや、炭水化物の摂りすぎだ」などという判断は難しいですよね。
せっかく成分表に三大栄養素が掲載されているのですから是非活用したいものです。
今回はPFCバランスを使い、三大栄養素のバランスをチェックする方法をまとめていきましょう。
PFCバランスとは?
PFCバランスとは、エネルギーが三大栄養素(タンパク質P、脂質F、炭水化物C)から適切な割合で摂取できているかを判断するためのものです。正式には「エネルギー産生栄養素バランス」といいますが、ここでは分かりやすく「PFCバランス」と表現させていただきます。
主にレーダーグラフを用いて視覚的に分かりやすく表現されています。
バランスが良いと綺麗な三角形になり、
栄養が偏るとこのように形が崩れます。
この場合は脂質が多いということです。
「栄養バランスが良い」とはどういうこと?
厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で生活習慣病の予防としてエネルギー摂取の目安を以下のように定めています。
栄養素 | 目標量の範囲(%) |
---|---|
タンパク質 | 13~20 |
脂質 | 20~30 |
炭水化物 | 50~65 |
※ただし脂質の飽和脂肪酸は18歳以上において7%以下に
それぞれの栄養素は以下の係数でエネルギーに換算できます。
栄養素 | エネルギー換算係数 |
---|---|
タンパク質 | 4kcal/g |
脂質 | 9kcal/g |
炭水化物 | 4kcal/g |
そしてお馴染みの成分表。
これらを用いると「エネルギーを三大栄養素から適切な割合で摂取できたか」が判断できます。
つまりバランスがよい食事だったかがわかるということです。
例えばこんな感じに
具体的にいくつかの例を見てみましょう。
山崎製パン 薄皮クリームパン
パンに甘いクリームですので明らかに糖質が多そうです。炭水化物は糖質+食物繊維ですので、PFCバランスは炭水化物の割合が多くなるのでしょう。
ところがPFCバランスはこうなりました。
商品名 | 単位 | 熱量(kcal) | たんぱく質(g) | 脂質(g) | 炭水化物(g) | 食塩相当量(g) |
---|---|---|---|---|---|---|
薄皮クリームパン | 1個当たり | 97 | 1.8 | 3.4 | 14.9 | 0.1 |
意外にも意外、炭水化物(糖質)はさほど多くなく、脂質が若干多め、そしてタンパク質が少ないという結果になりました。糖質満載の菓子パンだと思われがちですが、たっぷりのクリームが牛乳の脂肪から作られているためこのようなバランスになってしまうのです。
山崎製パン 薄皮つぶあんぱん
では、同じ薄皮シリーズのあんぱんならどうでしょうか。あんは小豆を砂糖で煮詰めたものですので、今度こそ炭水化物(糖質)が多くなりそうです。
商品名 | 単位 | 熱量(kcal) | たんぱく質(g) | 脂質(g) | 炭水化物(g) | 食塩相当量(g) |
---|---|---|---|---|---|---|
薄皮つぶあんぱん | 1個当たり | 122 | 3.1 | 0.8 | 25.7 | 0.1 |
はい、確かに極端な糖質過多でした。今度は脂質が極めて少なくなりましたね。
炭水化物に含まれる糖質はすぐにエネルギーになりますが、脂質は消化に時間がかかってしまいます。マラソンや自転車の栄養補給食としてクリームパンではなくあんぱんが定番なのも納得ですね。
このように同じ甘い菓子パンでもPFCバランスが大きく異なります。私達は「甘ければ糖質が多い」というイメージを持ちがちですが、正しくない場合もあるということですね。
ほっともっと から揚げ弁当
ほっともっと定番の「から揚げ弁当」。から揚げですので油っぽいイメージが強いです。
しかしPFCバランスはこの通り。
商品名 | 熱量(kcal) | たんぱく質(g) | 脂質(g) | 炭水化物(g) | 食塩相当量(g) |
---|---|---|---|---|---|
から揚弁当 | 725 | 35.0 | 18.6 | 103.3 | 2.7 |
脂質が極端に多いと思いきや、三大栄養素のバランスはなかなか素晴らしいものになっています。これも意外ですよね。
鳥肉で脂質とタンパク質、ご飯で炭水化物。この弁当はご飯とから揚げの配分がちょうど良いということでしょう。
「誘惑に負けてから揚げ弁当を食べてしまったから夕食は脂質を控えないと」というのは間違いだったということです。
このように成分表をPFCバランスで確認すると、三大栄養素の摂取量を正しく認識することができます。
PFCバランスを使う際の注意点
わかるのは三大栄養素の割合だけ
このPFCバランスは三大栄養素のみを評価しています。五大栄養素として組み込まれているビタミンやミネラルは考慮されていません。
また飽和脂肪酸などの脂質の種類、炭水化物の糖の種類や食物繊維なども考慮されていません。
PFCバランスは最も大きな枠組みで食事の傾向を確認するためのものです。動脈硬化改善のための食事療法として栄養バランスの改善を考えているなら、このPFCバランスの確認だけでなく、もう一歩踏み込んだ配慮が必要となるでしょう。
まずは摂取エネルギーのチェックを
例えPFCバランスが完璧であったとしても、一気に2食分食べてしまうと全ての栄養素を2倍摂取したことになります。それでもPFCバランスは完璧と評価されてしまいます。当然ながら肥満待ったなしでしょう。
PFCバランスを確認するなら、まず「摂取するエネルギーが適切か」をチェックしないといけません。
エネルギー割合はアレンジも可
厚生労働省が示した割合の目安は統計的に平均的体質の方を対象としています。糖質制限を活用して痩せたい、脂質異常症のため脂質はできるだけ避けたい、腎臓病でタンパク質制限を指導されているなど、自分に最適なエネルギー摂取の割合があるなら積極的にアレンジをしていきましょう。
例えば私の場合、糖尿病一歩手前という警告を受けていますので炭水化物少なめが最適と考えています。
通院をしているなら主治医の先生に相談することをおすすめします。
標準栄養バランス一覧表
各エネルギーーに対して理想的な栄養素の量を一覧表にしてみました。
この一覧表に成分表のエネルギー(カロリー)を当てはめると理想的な栄養素の量がわかります。
では、この表で吉野家の牛丼を見てみましょう。
吉野家 牛丼(並)
商品名 | エネルギー | タンパク質 | 脂質 | 炭水化物 | 食塩相当量 |
---|---|---|---|---|---|
牛丼(並) | 669kcal | 19.4g | 23.4g | 95.1g | 2.7g |
表に当てはめてみるとこのようになりました。
牛丼はタンパク質が不足しており、脂質が多い、そして炭水化物は適切ということが分かります。脂質は総エネルギーが850kcal相当の量でした。
よく「牛丼ばかり食べるのは体に良くないよ」と言われますが、具体的には「脂質が多く、タンパク質が少ないから」ということが理由の一つだったんですね。
なお、決して「栄養バランスが崩れている料理は食べてはいけない」ということではありません。概して外食は脂質と炭水化物、そして摂取エネルギーが多くなりがちです。長期間に渡りそのような食事を繰り返すと生活習慣病を招き、最終的には合併症を引き起こします。「アレ?おかしいな」と自覚できるのは糖尿病や腎臓病、狭心症や脳卒中などの合併症の症状が出たときです。
一度合併症を発症してしまうと完全治癒は困難です。厳しい食事制限をしながら一生をかけて治療していくことになるでしょう。そうならないためにも、日々の食事を正しく評価し補正をしていく必要があるのです。
栄養バランス暗算評価法「25/40/7」とは
時間があればExcelやアプリでグラフにするのもよいですが、スーパーや飲食店でいちいち数値を入力するのは大変です。上記の標準栄養バランス一覧表で確認することをおすすめします。
しかし一覧表を使わずにパッケージやメニューの成分表を見て「あっ、これ脂質がスゲーな」とサッと評価できるようにもなりたいですよね。
では、こんな方法はいかがでしょうか?
PFCバランスの計算を簡略化するとこのような係数が出てきます。
タンパク質(g)×25=理想的総エネルギー
脂質(g)×40=理想的総エネルギー
炭水化物(g)×7=理想的総エネルギー
成分表に記載されている栄養素の重量にこの係数をかけると、その栄養素が正しい割合で含まれていたときの総エネルギーが分かります。
例えば、成分表の総エネルギーが300kcalで脂質が10gなら、
10×40=400
総エネルギーが400kcalのときにバランスが良いとされる脂質が含まれています。しかし成分表の総エネルギーは300kcal。すなわち「脂質がかなり多い」ということが分かります。
このように「25/40/7」という数値を覚えておけば、簡単な暗算で栄養バランスが評価できるようになります。
なお、暗算をしやすくするために係数を微調整していますが、ほぼ目安の中心に来ているので実用には問題ないでしょう。
では試しにこの成分表を暗算で評価してみましょう。
セブンイレブン 海鮮お好み焼き
200円とお手頃価格ながら美味しいと評判の冷凍お好み焼きです。
商品名 | エネルギー | タンパク質 | 脂質 | 炭水化物 | 食塩相当量 |
---|---|---|---|---|---|
海鮮お好み焼き | 286kcal | 12.7g | 10.9g | 34.2g | 2.6g |
まずエネルギーをチェック。
サイズが小さいこともあり286kcalと控えめで食事としては物足りません。菓子パン程度ですので間食や夜食用でしょうか。
粉モノですのでおそらく炭水化物(糖質)が多そうですね。
では、炭水化物から見てみましょう。34.2gですが、計算を簡単にするために34gにしてしまいましょう。
34×7=238
成分表の総エネルギーが286kcalなら炭水化物は適正量ですので、238kcalなら・・・、あら、若干少ないんですね。粉モノなのに炭水化物が少ないという予想外の事実がわかりました。
次に脂質を。
10.9gですが11gにしてしまいましょう。
11×40=440
※×40は×2×2×10と分解して「倍の倍に0を付ける」と考えると楽に暗算できます。
成分表の総エネルギー286kcalに対して440kcalですので、脂質がかなり多いということがわかりました。
では、タンパク質はどうでしょうか。
12.7gですが13gにしてしまいましょう。
13×25=325
※×25は×(1/2)×(1/2)×100、つまり「半分の半分に0を2つ付ける」と計算するとよいでしょう。
成分表の総エネルギー286kcalに対して325kcalですのでタンパク質は若干多めです。
まとめると
・脂質が多い
・炭水化物は若干少ない
・タンパク質は若干多い
となります。
予想と反してこのお好み焼きは脂質過多の料理ということが判明しました。たっぷりのソースが脂質を増やしているのかもしれませんね。
こうして確認をしなければ脂質の摂取過多は見抜けず、「糖質摂りすぎた」と誤解をしてしまうことでしょう。
念のためグラフにもしてみましょう。
・脂質が多い
・炭水化物は若干少ない
・タンパク質は若干多い
確かにそのとおりですね。
いかがでしょうか。
この方法を覚えておけば、簡単な暗算をするだけで栄養バランスの評価が出来るというわけです。頭のトレーニングにもなりますので是非チャレンジしてみてくださいね。
いろいろな料理をPFCバランスで確認してみよう
さて、実はココまでが前フリだったりします。
これからこのPFCバランスを使い、ファーストフード、パン、麺類、お菓子、インスタントラーメンなどいろいろな料理を見ていきましょう。それぞれ何かしら共通の傾向があるはずです。前出のクリームパンやから揚げ弁当のようにイメージと異なる料理もあるでしょう。
それらを一緒に学んでいきましょう!
ということで次回は「丼ものをFPCバランスでチェックしよう」です。
ご期待下さい!