しっかり減塩、でもしっかり美味しい! 「つけ塩減塩法」

高血圧と診断されると悩ましいのが食事療法の減塩。
塩分は1日6g以内と指導されてしまいます。
つまり1食2gです。
これでは外食はほぼ全滅、自炊でも難関です。
そして美味しいものではありません。
これからの人生、味気ない食事で過ごすなんて悲しすぎます。

しかし、塩の量と料理の美味しさは必ずしも相関関係にあるわけではありません。
一度「塩を味わう」について整理をしてみましょう。
そこには「しっかり塩味がするのに大幅減塩」というなんともオイシイ話が隠れています。

塩と味覚について再認識しよう

まずは塩味の感じ方についてみていきましょう。
簡単に試せる実験ですので是非皆様も試してみてください。

用意

小皿に塩を少量。
コップに水も用意しましょう。

準備はこれだけです。

1)塩味は極微量でも感じることができる

塩の結晶2~3粒ほど舌に乗せて味わってみましょう。

微かに塩味が感じられるはずです。

結晶の大きさは塩の作り方で変わりますが、一般的な精製塩であれば結晶1粒の重量は0.0001g程度です。つまり結晶1つは1gの1/10000です。
私たち人間は塩に対して極めて敏感だったのです。

水で味をリセットして続けましょう。

2)結晶5粒で十分に塩味を感じる

では次に味わう粒を増やしてみましょう。

5粒ほどで塩味がしっかり感じられ、10粒を越えるともう塩辛いはずです。つまり塩味を美味しく味わうだけであれば極めて少ない量で十分だったのです。

3)塩味は持続する

一般的に塩味は口の中で持続性がなく後味に残りにくいと言われています。
実際に試してみましょう。

塩辛いと感じるだけ塩を舐めた後、塩味がどう変化するか注目してみましょう。溢れてくる唾液を飲み込んでも塩味はなかなか消えません。

塩味は唾液に溶け味蕾に触れることで感知されます。ところが私たちの口では全ての唾液を即座に飲み込むことができません。新たに出て来る唾液で薄めながら少しづつ飲み込んでいるのです。つまり今回のように直接塩を味わうと口に残っている塩味は緩やかに持続するということです。

再認識出来たことを整理してみよう

1)塩は結晶数粒でも味を感じる
2)塩は結晶5粒以上あればしっかりとした塩味を感じる
3)舌で直接塩を味わうとしばらく塩味が持続する

私たち人間は塩味に対して極めて敏感である。
まずこのことを再認識しないといけません。

なぜ大量の塩を摂取してしまうのか?

これはもう簡単ですね。
料理の塩の大部分が舌に触れずに飲み込まれてしまうからです。

とくにスープはスプーンでどこをすくっても同じ味。だから美味しいスープには大量の塩分が必要で減塩が難しいのです。

例えばこのインスタント味噌汁、食塩1.8g全てを舌で味わったら悶絶してしまうでしょう。

料理のどこを食べても美味しい塩加減にするとどうしても無駄に塩分を摂りすぎてしまいます。それなら味を感じる部分、つまり舌の上だけを美味しい塩加減にすれば良いのではないでしょうか。

「つけ塩減塩」とは

「つけ塩減塩」とは、調理ではなく食事の際に塩をつけて食べることで「美味しい」と「減塩」を両立させる手法です。

前出の再認識を踏まえて「つけ塩減塩」の要点をまとめていきましょう。

①極力水分が少ない料理を選ぶ
②調理では味付けとしての塩を使わない
③ただし塩以外の味付けはする
④小皿に少量の塩を用意する
⑤料理に塩を少しつけ、その場所から口に運ぶ

たったこれだけです。
しかしその効果は絶大。

実際に試してみましょう。

つけ塩を試してみよう

今回はこんな料理を用意してみました。

おかずは鶏モモ、厚揚げ、カボチャ、ブロッコリ、ほうれん草のおひたし。
そして塩を小皿にとります。

鶏ももは胡椒を振りグリルで皮がパリッとするまで焼き、厚揚げとカボチャは塩分無添加のだし汁と砂糖で煮ています。ほうれん草のおひたしは濃い目のだし汁を小さじ1杯ふりかけました。ブロッコリは茹でただけです。

では、いただきます!

まず鶏ももを塩を付けずに食べてみましょう。

胡椒の辛味と風味を感じます。鶏肉の味が広がった後の締まりがなく、なにか物足りない印象が残ります。もちろん肉は美味しいのですが、何かが足りません。

次に塩をつけて・・・ありゃ、つけすぎた。

「塩辛い! ・・・が美味い!」

塩をつけたほうが肉の味が引き締まり旨味を一層強く感じます。言うなれば塩味の焼き鳥ですので美味しくないわけがありませんよね。ただ均一に塩が振られた振り塩ではないため、先に強い塩味を感じ、その後噛むたびに鶏の旨味がじゅわじゅわと広がっていきます。この食べ方では味の伝わり方「先味、中味、後味」が従来の料理と変わるということですね。

厚揚げも塩味の後に出汁の旨味と甘みがやわらかく広がります。ほうれん草も後から爽やかな苦味が追いかけてきます。ブロッコリもそうですが、青物野菜はしっかり塩をつけたほうが美味しいですね。カボチャはそのままでも美味しいので塩はいらないですかね。

減塩食にありがちな淡くぼやけたままの残念な味付けではなく、塩味がキリッと感じられ、その後に食材の味がストレートにでてくる美味しい料理でした。これが食材の味を引き立てる塩の効果でしょう。

美味しかったです!
総合的に見ると大満足です。
減塩を始めるとなかなか味わえない力強い塩味、そしてソースの強い旨味や香りでごまかされていない素材の味を楽しめました。

さて今回の料理の塩分はどのくらいでしょうか。
食材自体に含まれていた塩分は極僅かですので今回は無視してしまいましょう。
なんと、始めに用意した塩はたった1g!
しかも小皿にこれだけ残っています。

いかがでしょうか。
無理と言われがちな1食塩分2gですが「塩をしっかり味わう」を突き詰めるとこれほど簡単にクリアできてしまうのです。

課題もまとめておこう

さて、今回の試みでいくつか課題もでてきました。
そして課題があればまた新しいアイデアも見えてきます。
こちらもまとめておきましょう。

強い塩味を感じてしまう

直接舌に塩を乗せているのでどうしても始めに塩辛さを感じてしまいます。
今回はあえて純度の高い精製塩を使用したこともその原因でしょう。

少量の塩をしっかり味わうのですから、味の角が丸く味わい豊かな天然塩をお勧めします。
そしてブレンド塩も忘れてはいけません。抹茶塩、唐辛子塩、山椒塩、カレー塩、ハーフ塩などなど。お店で購入することもできますが、あらゆる味が粉末になっているご時世ですので自分でブレンドしてみるのも一興です。私もまた試していないのですが粉醤油なんてものも存在します。

こうしたスパイスプレートで何種類か用意し相性を楽しみながら食べるのがオススメです。

左から山椒塩、ニンニク塩、唐辛子塩です。どれも肉との相性は抜群です。

味の広がり方が違う

この食べ方ではどうしても塩味→素材の味という味の広がり方になってしまいます。
定番の家庭料理をアレンジしてつけ塩にしてしまうと「味が違う、だから美味しくない」と評されてしまうかもしれません。もしご自分でなくご家族のための減塩料理であるなら、別の新しい料理として提供したほうが受け入れられやすいでしょう。

現在、外食産業で料理をつけ塩で食べるという小さな流行が起きています。天ぷらでは抹茶塩がメジャーになりましたが、刺身や寿司、焼肉、トンカツ、蕎麦、コロッケ、ハンバークなどもつけ塩で提供するお店がでてきました。香りや旨味のない塩で食べることで良質な食材そのものの味を楽しんでもらおうという趣旨です。「意識が高い連中が気取ってるだけだ」と揶揄されてもいますが、あえてこの流行に乗るのも良い手だと思います。何か言われても「意識が高い? いやいや血圧が高いんだよ」と笑い飛ばしてしまいましょう。

外食の振り塩はちょっと違う

外食の振り塩、特に飲み屋で提供される振り塩の料理は減塩とは言えません。

つけ塩と変わらないのではと思いがちですが、お酒を飲むためのツマミですので使われている塩の量が多いのです。口に入れてもぐもぐもぐ、すぐにビールゴクゴク。しきりに口をお酒で洗い流すため、ツマミも濃いめの味でないとバランスが取れないのです。

例えば手頃な価格で人気の焼き鳥居酒屋「鳥貴族」。塩味の鶏もも2本の塩分相当量は2.0g。これで1食分の塩分を摂取してしまいます。振り塩イコール減塩ではありません。覚えておきましょう。

塩は油に溶けない

もう一つとても大切なことがあります。

塩は油には溶けません。

このために油が多い肉は多めに塩を使わないと美味しくなりません。肉をコートしている油は塩味がしないからです。
油の影響を小さくするためにも「食べる直前に塩をつける」が有効ということです。

食材の質にこだわろう

食材そのものの味が際立つ食べ方です。このため食材自体の質が良いことが重要なポイントとなります。美味しい食材は塩だけで食べても美味しいということです。

今回試した鶏肉も安価な臭みのあるものなら美味しいとは言えなかったでしょう。もちろん高級品である必要はありませんが、肉も野菜も加工食品も良い質のものを選びましょう。割高な減塩食材を購入することを考えれば金銭的なデメリットは少ないはずです。
減塩のために美味しいものを食べるなんて素晴らしいじゃないですか!

塩の味以外の効果は十分に活用しよう

塩は味以外にも多種多様な効果を持っています。臭みをとったり、水分を抜いたり、麺にコシをだしたり、保存性を高めたり。

今回の減塩方法は味付けの部分だけを見ています。塩の各種効果を排除するものではありません。美味しい食材を作るための塩は大いに活用しましょう。

さあ皆さん、塩を楽しみましょう!

減塩は不味い。
世間一般的にこう言われています。
それは既存の美味しいレシピから塩分を抜くだけだからです。

今回のようにちょっとした工夫をするだけで美味しさと減塩は両立させることができます。
もしこの食べ方が気に入ったのであれば、つらい塩分制限も楽しいものに変わるでしょう。
この減塩方法は自信を持ってオススメできます。
是非試してみてくださいね。

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コメント

  1. Itsuko M より:

    ameoさん、3月になりました。お変わりないですか?お仕事、手こずってらっしゃるのかな。毎回、こんなびっちりしたレポートでなくていいから、簡単な近況をお知らせください。

    • ameo より:

      どうもです。
      絶賛やさぐれ中です。。

      この記事を書いたあと、主戦力のノートPCがOSの定期アップデートでBIOSごとクラッシュ。
      時を同じくして母艦のデスクトップPCもHDDが動いたり動かなかったりと不安定に。
      こりゃまずいと新しいPCを発注するも、部品不足で納期が未定に。
      そんなこんなで1ヶ月を無駄にしていました。
      新しいPCのセットアップもほぼ終わりましたので、あとは確定申告が終わればようやく振り出しに戻れます。

      いまだ不運の渦から抜け出せません。
      まったく困ったものです。

  2. haru より:

    初めまして

    『運転がしたい』の書き込みを入院中から繰り返し読み続け、とても勉強させて頂きました。お陰さまで昨年、無事適性検査を受け運転再会となり、この度警察署での免許更新が出来ました。
    本当にとても参考になり、感謝しております。
    私は昨年1月右視床出血を発症した者です
    『運転がしたい』のお陰で無事に運転再会、更新と出来ましたことお礼申し上げたく、コメントさせて頂きました。

    • ameo より:

      haruさん、はじめまして。
      管理人のameoと申します。
      コメントありがとうございます。

      かなり根を詰めて書いた記事ですのでそう言っていただけると本当に嬉しいです!

      運転再開おめでとうございます!
      もうすぐ春、ドライブには最高の季節です。
      ぜひ運転楽しんでくださいね。

      ただしばらくは超安全運転でお願いしますね。
      私達の脳は脳卒中で大なり小なり何かしらの変化をしています。
      私も運転再開当初は頭の処理が追いついていないような違和感で不安でしたが、それも時間とともに消え去りました。
      運転という高難易度のマルチタスクは認知力や判断力を活性化する素晴らしいリハビリになります。
      しばらくは「運転もリハビリ」と考えて安全第一でいきましょう!

      • haru より:

        ameoさん
        お返事有り難うございます
        リハビリ病院でしたが適性検査の内容までは把握されていなかったので
        OTの先生に物凄く詳しく書いて下さっている方がいらっしゃる‼と『運転がしたい‼』を紹介しました
        今改めて読み返しても感動します‼

        運転再会は出来ましたが最初ほぼ一年ぶりの運転で初心者マークが必要だわと思ったくらいで法定速度で走っていました(笑)
        でも安全第一ですから慎重にで運転は緊張します

        病院の七夕の短冊に“適性検査一発合格”と書きました
        本当に叶って嬉しいです

        その後の体調は如何でしょうか
        私は寒さが堪え春が待ち遠しかったです
        痺れや痛みも緩和される事を願います
        ameoさんもどうぞご自愛下さい

        • ameo より:

          お気遣いありがとうございます!
          日課のランニングのおかげで体調や体力は良好、むしろ脳出血発症前より良いくらいです。
          しかし漢字がなかなか出てこないという高次脳機能障害がちょっと尾を引いてますね。
          まあ、なんとかするしかないでしょう。

          haruさんも諦めないでくださいね。
          高次脳機能障害同様に感覚障害も厄介ではありますが、正しい状態を繰り返すことがリハビリになるという基本は変わりません。
          痛みや痺れがどんなときに緩和するかをしっかりチェックしてくださいね。
          そこに必ずヒントがあるはずです。

          これからも楽しいことがたくさんありますよ。
          お互い長生きしましょうね!
          それでは。

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