先日、久しぶりに風邪をひいたのですが血圧が暴れて大変な思いをしました。
適当に風邪薬を飲んでなんとかしのぎましたが、あまりよい対処方法ではなかったなと反省しています。風邪薬は高血圧を悪化させるものが多いのです。
風邪と風邪薬の相互作用でしょうか、普段115mmHg程度に抑えられていた上の血圧が160mmHg近くまで上がったのです。脳出血で入院していたときの「血管が切れたときおそらく180mmHgを超えていた」という看護師さんの言葉を思い出し、非常に恐ろしい思いをしました。
症状はよくある普通の風邪です。
しかし脳出血を経験している私にとっては「ただの風邪」では済まされなかったのです。
今回はこの失敗を踏まえて「高血圧患者にお勧めできる市販の風邪薬はあるのか」を調査してみました。
結果は「そんなものはない」だ!
すいません。
もういきなり身も蓋もありません。
残念ですが、私達が急な風邪でお世話になる市販の風邪薬には「高血圧患者にはコレが最適!!」とおすすめできるものはありませんでした。
風邪薬は高血圧やそれに絡む疾患に何かしら悪影響を与える可能性がある、ということです。
風邪薬が風邪に効く仕組み
実は風邪薬は主原因であるウイルスを始末するわけではありません。症状を抑え込み各種成分で体調を整え、回復した免疫力でウイルスに打ち勝つという仕組みなのです。だから風邪を引くと休息や睡眠が重要になってくるのです。
「仕事休めない」と風邪薬を服用しながらハードな日常を続けると、いつまで経っても風邪は治りません。そんなよくある現象はこういう理由で起こるのです。休むこと寝ることも薬同様に重要だったのです。逆に、しっかり休んで栄養をたっぷり取り、体の免疫力を向上させることができるなら、風邪薬を使わずに回復することも可能とも言えます。
メジャーな風邪薬では「高血圧」がどのように扱われているのかを見ていきましょう。
風邪薬の説明文書
コンタック総合感冒薬(GSK)
公式サイト:http://contac.jp/products/con_sougou.html
説明文章:http://contac.jp/shared/pdf/con_sougou.pdf
「相談すること」
①次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談して下さい
(8)次の診断を受けた人。
甲状腺機能障害、糖尿病、心臓病、高血圧、肝臓病、腎臓病、胃・十二指腸潰瘍、緑内障
●パブロンゴールドA錠(大正製薬)
公式サイト:http://www.catalog-taisho.com/04528.php
説明文章:http://www.catalog-taisho.com/pdf_product/04528_Explanation1.pdf
「相談すること」
①次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談して下さい
(6)次の診断を受けた人。
甲状腺機能障害、糖尿病、心臓病、高血圧、肝臓病、腎臓病、胃・十二指腸潰瘍、緑内障
新ルルA錠(第一三共ヘルスケア)
公式サイト:http://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/details/lulu_a_tab/
説明文章:http://www.daiichisankyo-hc.co.jp/package_insert/pdf/lulu_a_tab_1.pdf
「相談すること」
①次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談して下さい
(6)次の診断を受けた人。
甲状腺機能障害、糖尿病、心臓病、高血圧、肝臓病、腎臓病、胃・十二指腸潰瘍、緑内障
ベンザエースA錠(武田薬品工業)
公式サイト:http://www.benza.jp/lineup/benza-ace.html#bb-ace02
説明文章:http://takeda-kenko.jp/data/pdf/ben_aaj.pdf
相談すること
1.次の人は服用前に医師・薬剤師または登録販売者に相談すること
(7)次の診断を受けた人。
心臓病、肝臓病、高血圧、腎臓病、胃・十二指腸潰瘍、緑内障、糖尿病、甲状腺機能障害のある人
葛根湯エキス顆粒S(クラシエ)
公式サイト:http://www.kracie.co.jp/products/ph/1201502_2220.html
説明文章:http://www.kracie.co.jp/products/pdf/4987045069260.pdf
相談すること
1.次の人は服用前に医師・薬剤師または登録販売者に相談すること
(9)次の診断を受けた人。
高血圧、心臓病、腎臓病、甲状腺機能障害
どの風邪薬も高血圧患者は服用前に相談が必要とされています。
では、薬局で相談してみるとどうなるのでしょうか。
実際に試してきました。
薬局で相談したらどうなるか
市販薬には高血圧用風邪薬というものは存在しません。このため薬局やドラッグストアの薬剤師に「高血圧なのですが、血圧に影響がでない風邪薬はありますか?」と相談をすると、必ず「風邪薬はなにかしら血圧を高める成分が入っているので、主治医に相談してください」という答えが返ってきます。
高血圧とは「血圧が高い」という症状の総称です。肥満/食生活/ストレス/腎臓/糖尿病/動脈硬化・・・、血圧が高くなる原因は無数にあり、複数の原因を同時に抱え込んでいる場合もあります。また高血圧から生じる合併症もあるでしょう。そして患者により血圧上昇の危険度も違います。
「高血圧」だけでは体の中で何が起きているのかがわからないのです。いくら薬のプロ「薬剤師」といえども、その人の高血圧の本質を知らずにリスクのある薬を勧めることはできないでしょう。
このように高血圧で通院しているような人は、薬剤師や登録販売者に相談しても無駄足になります。
やはり主治医に頼るしかありません。
主治医に相談しよう
私たちは風邪や頭痛、胃痛など身近な疾患を完全にシャットアウトすることはできないでしょう。しかし、大抵の市販薬には何かしら血圧に作用する成分が入っています。
例えば風邪薬「パブロン」では、
成分 | 含有量(3錠中) | 効果 | 血圧に対する副作用 |
---|---|---|---|
ジヒドロコデインリン酸塩 | 8mg | 麻薬性鎮咳成分、せき中枢にはたらき、せきをしずめる | 血圧変動 |
dl-メチルエフェドリン塩酸塩 | 20mg | 交感神経に作用して気管支を広げ、呼吸を楽にし、せきをしずめる | 血圧上昇/心拍数増加 |
グアイフェネシン | 41.67mg | のどにからんだ痰をやわらかくし、出しやすくする | |
アセトアミノフェン | 300mg | 発熱、頭痛、のどの痛みなど、熱と痛みをしずめる | |
リゾチーム塩酸塩 | 20mg(力価) | リゾチーム塩酸塩 | |
マレイン酸カルビノキサミン | 2.5mg | くしゃみや鼻汁、気道、皮膚の炎症を抑える | |
無水カフェイン | 25mg | 中枢神経を刺激するし、痛みを和らげる。また他の成分の効果を高める | 動悸、頻脈、過剰投与で血圧上昇 |
ビスイブチアミン(ビタミンB1誘導体) | 8mg | ビタミンB1の体内での効果を高める | |
リボフラビン(ビタミンB2) | 4mg | 皮膚や粘膜を正常にたもつ |
添加物:セルロース、メタケイ酸アルミン酸Mg、無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルセルロース、硬化油、ステアリン酸Mg、香料、バニリン、安息香酸ベンジル、デキストリン、乳糖
※副作用は必ず発生するものではありません。体調/体質で大きく変化しますので注意が必要です。
このように構成されています。
幾つか血圧に影響する成分が入っていますね。
血圧を上昇させる余裕がない人は、血圧に影響が出ない成分だけを選んで服用しないといけません。
つまり「高血圧患者になったのであれば、主治医に相談して自分の高血圧に相性のよい成分だけで風邪薬を処方してもらう必要がある」と考えましょう。
高血圧で内科に通院しているなら、風邪も内科ですのでスムーズに解決できるでしょう。
問題は脳卒中を経験するなどして、脳神経外科や脳卒中科など脳に関わる科にお世話になっている人です。「血圧に影響がでない風邪薬が欲しいのですが」、そう言われても脳神経外科の先生は困惑してしまうでしょう。なにせ専門外の疾患と薬について問われているのですから。薬を処方することも出来ないでしょう。
高血圧や脳卒中は他の疾患の治療を難しくさせる厄介者
重度の高血圧や脳卒中を一度でも経験してしまうと、別の疾患や怪我の治療がスムーズに受けられないことがあります。
急患として近所の専門病院に駆け込んでも「紹介状がないと診察できない」「その病院に行ってください」と言われてしまうこともあるでしょう。私も血液検査受けようとしたら、受付で門前払いをされたことがあります。私たちは取り扱いの難しい患者だったのです。
このため今後、高血圧や脳卒中以外の疾患を起こすことまで考えると、専門病院より総合病院の方が対応力が高いと言わざるをえません。専門病院に通院されている方は、他の疾患にかかった時の対処法を主治医とよく話し合いまとめておきましょう。
例えばこんな感じに聞いてみましょう。「急患でも問診票の高血圧や脳卒中の項目にチェックが入っていると紹介状を求められる場合があるらしいのですが、その時はどうしたらよいのでしょうか?」
高熱にうなされながら二つの病院を行き来するのは不可能です。
準備をするなら今のうちです。
では、私はどうする?
まず私が通院していた頃を想定して考えてみると、主治医に「その時は内科を紹介するから来て」と言われるような気がします。通院していたのが総合病院ですので、脳神経外科と内科の先生が直接話し合って薬を決めることになるでしょう。ただし、緊急指定病院のためか外来診察は週に1日、しかも午前中のみに限られていました。そこがネックになりそうです。脳出血で通院を続けるのであれば、外来を毎日受け付けている別の総合病院に転院したほうが安心できた、ということです。
では、脳出血がほぼ完治して通院が終わった「今」ならばどうすべきでしょうか。
通院していた脳神経外科がある総合病院の内科に行くのがベストです。しかし外来は週一のみですので都合よくタイミングが合うとは思えません。
近所の内科に転がり込んでも、脳出血の経験があるとわかった時点で治療行為が出来なくなるのではないでしょうか。おそらく「紹介状が必要」と言われるでしょう。最終的には「不足しがちな水分/栄養/ビタミンを補充して安静にしてください」と言われるだけにとどまると思います。
前出の通り、風邪に風邪薬は必須ではありません。内科で風邪の状態を確認してもらいつつ、風邪薬を飲まず、睡眠と食事で免疫力を高めることで風邪を治すという方法を選択せざるを得ないことになるでしょう。
風邪薬を飲まないという選択肢も間違いではない
私たちは体温が平熱を超えるとすぐに解熱剤を飲みがちです。今は風邪の発熱は免疫力を高める生体防御反応と考えられています。体を高温にすることで体の免疫力は何倍にも増えるのだとか。そう薬剤メーカーが説明してはいますが、風邪薬には解熱効果を狙った成分が必ず入っています。現代社会を生き抜くためには風邪気味だからといってすぐに休めるわけもなく、薬で症状を緩和させて働きながら治療する必要があるからでしょうか。
もちろん限度を超えた高熱には解熱剤は必要でしょうが、少し矛盾を感じてしまいますね。
そんな裏事情もありますので、睡眠/休息/食事で免疫力を高める処置をしつつ「風邪薬を飲まない」「服用量を減らす」という選択肢も間違いではありません。
またおかしな結論に達してしまいましたが、
・風邪に風邪薬は必須ではない
・風邪の治療には睡眠/休息/食事がとてもよく効く
という解決策もあるということ覚えておきましょう。
次回風邪をひいたら風邪薬なしをチャレンジしてみます。その前に免疫力を高める方法を調べておく必要がありますね。
最後に1点だけ注意を
この記事は「高血圧患者は市販の風邪薬を飲んではいけない」という内容ではありません。血圧が許容範囲に収まるのであれば、風邪薬を飲んだほうが回復は早いでしょう。
私の場合は、風邪薬を服用しても血圧が140mmHgを下回るのであれば積極的に利用するでしょう。しかし風邪薬の影響で血圧が160mmHgまで上昇するなら「服用しないで治す」を選びます。風邪より脳出血再発のほうが恐ろしいからです。
自分の状態をよく見極めてバランスを取りながら上手に乗り切りましょう。
コメント
こんばんは。
なかなか、私達脳出血前科者には
残念というか、
仕方がない、
という事なのですね〜(._.)
睡眠、休息、栄養、
手洗い、うがい、
風邪をひかないように注意する!
今度の定期検診で
先生に質問してみます。
フジッコさん、こんばんは。
市販薬は使えない、外来では腫れ物扱い。
高血圧や脳出血は症状が改善しても、他の疾患の足を引っ張るのですね。
ホント厄介モノです。
とにかく今まで以上に健康第一ですね。
マイナンバーのカルテ電子化でこの状況が改善すれば良いのですが。