塩分計を使い、運動による塩分排出量を算出する方法を考えよう

20150724_sport_and_desalt

運動時の発汗量汗の塩分濃度を測定し、塩分の排出量を算出する方法をまとめていきましょう。

これがうまくいけば高血圧対策の減塩に「積極的に塩分を排出する」という新しい手法が使えることになります。
すなわち生活に汗をかく運動を追加することで、食事による塩分制限を緩和できるかもしれないのです。

しかし実際にやってみると思っていた以上に複雑でした。
何を考えてどういう結論に達したかを整理しておきましょう。

簡単に塩分排出量が分かる…わけではなかった

先日塩分計「PAL-sio」を購入しました。
早速ランニング時の汗の塩分濃度を測定しています。

20150724_sport_and_desalt_02

塩分濃度さえ分かれば

発汗量×汗の塩分濃度=排出した塩分量

という計算で体から排出できた塩分量が算出できるからです。

ところが世の中はそんなに単純にはできてはいないようで、塩分濃度が大きくバラつくのです。同じ運動をしていても塩分濃度は0.2%~1.2%というようにバラバラです。
これは困りました。

このバラつく現象にはいろいろな要因が絡んでいますので、一度整理をすることで理解がしやすくなります。
測定データを見ながら解説をしていきましょう。

①塩分濃度を決めるのは発汗スピード

汗には塩分として扱われるナトリウムの他にもカリウム等のミネラル分が含まれています。しかし汗腺にはミネラルを再吸収し血液に戻すという機能があります。つまり皮膚の表面に出てくる汗はミネラルを回収された残りの水分なのです。日常生活の微かにかくような汗では皮膚に塩が浮くことがないのはこのためです。

20150706_salinity_of_sweat_02

ところがこのミネラル再吸収の機能にも量的な限界があり、大量発汗をすると大半のミネラルが水分と共に流れ出てしまいます。

つまり汗の塩分濃度は発汗スピードで変化するのです。

簡単にまとめると

  • 大量の汗を一気にかいたとき → 塩分濃度は高い
  • 軽い汗をかいたとき → 塩分濃度は低い
  • 日常生活のすぐに乾くような汗 → 塩分はほとんど含まれない

ということです。

塩分計で実際に確認してみました

運動が終了すると吹き出す汗は徐々に量が減る、すなわち発汗スピードが遅くなりいずれはとまります。運動後の汗を繰り返し測定し続けると塩分濃度は低くなるはずです。

実験は夏日の薄曇りで8kmランニング終了直後、部屋に戻ると天気が急変して雷雨となる環境でした。湿度が急上昇したためなかなか汗が引かず、期せずしてデータが取りやすい環境となっています。エアコンと扇風機を止めたままの室温30℃湿度ほぼ100%の部屋で測定をしています。

測定回数 経過時間(分) 汗の濃度(%)
1 0 0.45
2 3 0.42
3 7 0.42
4 9 0.40
5 12 0.37
6 14 0.35
7 18 0.28
8 21 0.29
9 24 0.27
10 27 0.21
11 30 0.17
12 36 0.17

※測定方法の詳細は後述
これ以降は汗が収集できないほど少なくなったので測定を終了しています。

0.45%だった塩分濃度は汗が引くとともに低くなり、36分後には0.17%となりました。
このように発汗スピードが落ちると汗の塩分濃度が低くなるという現象は私の体でも確認することができます。

「発汗スピードが早いと塩分濃度は高くなる」
「発汗スピードが遅いと塩分濃度は低くなる」

これは汗の仕組みを理解するための重要なキーになりますので必ず覚えておいてください。

②発汗は個人差が大きい

これはあらためて言うほどのことではありませんよね。

世の中には汗をかきやすい人とかきにくい人がいます。

20150724_sport_and_desalt_08

同じ部屋にいても暑がりで汗をダラダラかいている人もいれば、夏でも全く汗をかかない人もいます。
肥満で熱がこもりやすい人は汗をかきやすい傾向がありますが、痩せていても汗をかきやすい人もいます。
また汗をかかない生活を続けていると汗が出にくくなるなど生活習慣が影響をすることもあります。

つまり汗を語るとき、平均的・一般的な話を全ての人に当てはめることが極めて難しいのです。自分がどういう特性で汗をかくのか考えながら解釈するしかないということです。

③発汗は体の部位で異なる

運動をしたとき、汗を多くかく場所はどこでしょうか?
私の場合は、頭・顔・胸・背中に多く汗が残ります。
おそらく皆さんもこれに近いのではないでしょうか。

実は運動時に汗を出すエクリン汗腺は全身に平均的に分布しています。
ただし、体の大切な器官である頭・顔は熱から守るために汗が多めに排出されます。また滑り止めとしての役割もあるため手足も汗が多くなります。
さらに実際はエクリン汗腺の密度=汗の量とは言い切れず、胸部や背中などに大量の汗をかくことが知られています。

20150724_sport_and_desalt_09

このように同じ人であろうと体の部位によって発汗量は変化するのです。つまり同時にかいている汗でも体の部位により塩分濃度は違うのです。

こんな実験をしてみました

手をビニールで包んだまま8kmランニングをして溜まった汗を顔の汗と比較してみました。

20150724_sport_and_desalt_03

手の発汗量と塩分濃度は運動時にかいた汗全てを回収し測定、顔の汗は蒸発で濃度が濃くなっているためランニング終了直後にあらたに吹き出した汗だけを測定しています。

部位 塩分濃度(%) 発汗量(ml)
0.42 不明
0.20 14.5
全身 不明 2000

手も汗をかきやすいと言われていますが、顔の塩分濃度0.42%に対して0.2%しかありません。発汗量に注目しても全身で2000mlもの大量の汗をかいていますが、手は14.5mlと微量です。これだけ大きな差が出るのです。
またこの違いは「発汗スピードが遅いから発汗量が少なく塩分濃度が低い」という前出の理論にも合致します。

そして手の発汗量は全身の発汗量からみるとほんの0.7%しかなく、無視をしても問題ないレベルの少なさです。であれば、汗を大量にかく部位の塩分濃度を測定すれば平均値に近い数値が得られると考えて問題ないでしょう。すなわち測定をしやすく大量発汗をする「顔」で塩分濃度を測定すればよいということです。

④発汗スピードを決める要素は?

同じルートを同じペースで走っても汗をかく量や塩分濃度は大きく変化します。
夏と冬では大きく異なるというのは当たり前ですがそういう話ではなく、同じ季節に連日測定しても大きく変化をするのです。

「塩分濃度を決めるのは発汗スピード」ですが、では発汗スピードを決める要素はなんでしょうか?
前出の個人差・体の部位以外にどんなものがあるのでしょうか。

これはありとあらゆるものが影響をしています。

●気温・日光
暖かくなると汗をかきやすくなります。
また直射日光が皮膚を直接温めると汗が増します。

●湿度・風
湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、本来の目的である気化熱による冷却効果が機能せずに熱がこもり、さらに汗をかきやすくなります。
逆に風が強いと気化熱効果が高まり体が冷えることで汗が減ります。

●ウエア
厚着をすれば汗をかきやすくなりますが、帽子や日傘などで直射日光を遮ったほうが汗をかきにくくなる場合もあり、ケースバイケースです。

●運動量・精神状態
激しい運動をすれば当然汗をかきやすくなります。
また緊張など精神的な要因で汗が増える場合もあります。

●食生活・体調
水分を取り過ぎているときは汗が多くなり、脱水気味の場合は少なくなります。
塩分濃度は塩分をたくさん摂取しているときと塩分制限をしているときで大きく異なるでしょう。
また体調不良で汗が出ることもあります。

これらは普段の生活でもよくある現象ですので、ご理解いただけると思います。

そしてこれらの多種多様な要因が発汗スピードを変えてしまう、つまり発汗量と塩分濃度を大きく変えてしまうのです。
このため「今日の排出する塩分量はコレだ」というように予想することが極めて難しいのです。正確な塩分排出量を知りたいのであれば、運動ごとに発汗量と塩分濃度を測定しなければいけないということです。

図で整理しましょう

一度分かりやすく図にしてみましょう。

20150724_sport_and_desalt_04

たくさんの要素が関わって塩分の排出量が決まることが分かります。

汗の塩分濃度の測定方法で注意すべきこと

測定では一点だけ絶対に注意しないといけないことがあります。
コレを無視すると測定値は全く使えないものになるのです。

それは蒸発して残った塩分の影響です。
汗は蒸発し気化熱効果で体を冷やすために存在します。蒸発すると濃い塩分濃度の汗が肌に残るため、滴る汗をそのまま測定してしまうと極端に高い塩分濃度が検出されてしまうのです。

20150724_sport_and_desalt_05

例えば風の強い日は汗の蒸発が活発になり、塩分濃度が極端に高くなります。
また汗をタオルで拭わずに運動を続けると同様に濃い汗が残ります。

これも実際に試してみました

意図的に汗の塩分濃度が高くなるような環境・方法で運動をして、滴る汗を直接測定しています。

環境 塩分濃度(%) 備考
強風 1.02 汗はすぐに乾くためほとんど流れてこない
日中 1.17 運動中、汗を一度も拭かなかった

このように走った直後に滴る汗をそのまま測定すると、塩分濃度は極端に高くなります。汗のもとである血液の塩分濃度が0.9%と言われていますが、それを超えた濃度が検出されるという不可解なことが起きてしまうのです。

塩分が凝縮された汗が残っていることが原因ですので、測定の前に一度汗を綺麗に落とさないといけません。

これを踏まえて塩分濃度の測定は以下の方法で行いましょう。

汗の塩分濃度の測定方法

測定はこのようにして行うと正確な値を得ることができます。

1)安定して汗をかくまで運動をする。
2)顔の汗を乾いたタオルでしっかり拭き取る。
3)顔に浮き出た汗をスプーンですくい取る。
4)塩分計で測定をする。

20150724_sport_and_desalt_06

これでその瞬間にかいている汗の塩分濃度を測定することが出来ます。
運動直後であれば運動時にかいている汗と同等とみなして問題ないでしょう。このため出来るだけ早く測定を開始することが求められます。

大切なポイントは蒸発して塩分が濃くなった汗をしっかり拭い取ることです。

なお可能であるなら汗はぬるま湯で洗い流したほうがより正確になります。私の確認実験ではタオル拭きと差はありませんでしたが、環境が許されるのであればぬるま湯で洗顔をしてください。もちろん冷水での洗顔は汗が止まってしまうため厳禁です。

発汗量の測定方法

発汗量は下図のように体重計で測定します。
なお服を脱がないと正確な発汗量は得られません。

20150724_sport_and_desalt_07

排出した塩分量を算出しよう

さてようやくこれで塩分量の算出が可能になりました。

得られたデータで塩分量を計算しましょう

発汗量×汗の塩分濃度=塩分量

これで排出した塩分量が分かりました。

例えば塩分0.4%の汗を1000mlかいた場合は

1000ml×0.4%/100=4g

4gの塩分を排出できたということです。

実際に私の場合はどうだったか

同じコースで8kmランニングをしたところ以下のようなデータが収集できました。全て梅雨の明けた7月の真夏日に測定したデータです。

No. 発汗量(ml) 塩分濃度(%) 塩分量(g) 測定環境
1 1500 0.35 5.25 夕方時々曇り
2 1600 0.33 5.28 夕方風強し
3 2500 0.22 5.50 夕方晴れ→脱水症
4 2400 0.45 10.80 昼間薄曇り、運動後雷雨で湿度UP、汗なかなか止まらず
5 2000 0.42 8.40 夕方前薄曇り

このように環境が変わることで塩分量は大きく変化をしますが、概ね5g以上の塩分を失っていることが分かります。
おそらく炎天下に走ればもっと塩分を排出できますが、以前試して脱水症を起こし大変な目にありましたので控えています。

高血圧患者の一般的な塩分制限は1日6gです。また厚労省の「食事摂取基準2015」では男性が8g女性が7gを目標に設定されています。それに対して1時間の運動で5gの塩分を排出できているのですから効果は絶大です。

ただしこの塩分の排出量は今現在の私の環境要因で決まったもので一定値では無いでしょう。もちろん秋や冬になると減っていくでしょうし、塩分の摂取量が増えると塩分排出量も増えてくるはずです。
「条件を変えると塩分排出量がどのように変化していくか?」はこれからの課題ですので、いずれ全体像が見えてくるでしょう。

まとめ

  • 汗の塩分濃度は発汗スピードで決まる
  • 発汗は個人差・体の部位によって異なる
  • 同じ運動をしても些細な環境や体調の違いで発汗量と塩分濃度は劇的に変化するため、その都度測定する必要がある
  • 塩分濃度の測定前に蒸発で濃くなった汗を拭い去る必要がある。
  • 汗をかきやすい人であれば結構な量の脱塩が可能
  • 汗をかきやすい私の場合、真夏の8kmランニングで5g以上の塩分が抜けることが確認できた

高血圧対策の塩分制限は「摂取を控える」だけにこだわりがちですが、「脱塩」もうまく活用することで楽に健康的な高血圧対策が出来ると考えます。運動は脱塩だけでなくストレスを和らげて肥満を防止するなど別の側面からも高血圧を防ぎます。
この手法の検討がもっと進み、運動をキーにした脱塩法が確立できればツライツライ塩分制限を緩和できるかもしれませんね。

今後の課題

塩分計を購入してからまだ1週間ちょっとですが、なかなかおもしろいデータを得ることができました。
検討は始まったばかりですのでまだ調べなくてはいけないことが山ほどあります。

特に汗をかきにくい方、そして普通の方でも同様の効果はあるのかという点が最も気になるところです。「汗を大量にかく=塩分濃度が高くなる」という原理の上に成り立っている方法のため、もしかしたら汗をかきやすい人だけに使える方法なのかもしれないからです。もし興味のある方がおられましたらご協力頂ければと考えています。

今後の課題を思いつくままに書き連ねていくと

  • もう少し分かりやすくまとめたい。
  • 危険性についてもまとめなくてはいけない。
  • もう一つの塩分コントロール機能である腎臓との関係についても考えないといけない。
  • 運動中の汗の塩分濃度の変化も調べないといけない
  • 風呂やサウナでの発汗も同様の効果があるかもしれない
  • もしかしたら減塩ではなく、「うっかり過剰摂取」をチャラにする方法として役に立つのかもしれない。
  • 専門家の意見も是非聞きたい。

などなど

この件はこれで終了ではなく、まだまだ調査・検討が必要です。
何かご指摘やアドバイスなどありましたらコメントでお教え頂ければ幸いです。

高血圧対策もこうやっていろいろなことを考えながらやっていけば意外に面白いものですね。

最後に一つだけ大切なお話を

もしこの発汗脱塩法で積極的に塩分を抜きたいと考えると、夏場であれば必然的に

汗をかきやすい人は脱水症
汗をかきにくい人は熱射病(日射病)

を起こしやすくなります。もちろん双方を併発する危険性もあります。現に私も何度となく脱水症に陥っています。

「よっしゃ、炎天下に厚着をして10km走れば8g脱塩できるっぽいからラーメン食べていいんだな!!」というのは安直すぎますので絶対にやめましょう。

発汗性能は人により大きく異なります。万人に向けて「ここまでは大丈夫」と言い切れる定量的な目安は存在しませんので、測定したデータと体調を照らし合わせながら自分に最適な負荷を決めてください。

特に血圧の高い方や狭心症などの合併症を起こしている方、そして高齢者の方であれば運動制限が必要な場合もあります。
また尿が減るため腎臓の活動が低下する可能性もあります。尿酸の排出が滞っているためか、私もかすかではありますが痛風の症状が出てきています。

高血圧患者であればメリットの裏に潜むデメリットもしっかり考慮しないといけません。一度主治医に汗をたくさんかく運動をする旨を伝えて指示を仰いでください。

高血圧は塩分の過剰摂取だけではなく、多種多様な要因が絡み合って起きています。視野が狭くなり他を犠牲にして減塩だけをクリアしても何も良いことはありません。本当の目的は減塩ではないはずです。そのことをしっかり自覚し、その上で利用できるものはとことん利用してしまいましょう。

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です