「塩」の味付け以外の役割をまとめておこう

20160616_role_of_salt_01

食事療法として減塩を始めると、まず気付くのが食品に含まれる食塩の多さ。
「なんでこんな食材にまで塩を入れるの?」と思うこともしばしばです。
塩味くらい自分で調節するから塩無添加で作って欲しいですよね。

しかしよくよく調べてみると、「塩」は味付けだけが目的ではないことがわかってきます。

そこで今回は味付け以外の塩の役割を整理してみましょう。

①浸透圧による脱水

塩の高い浸透圧を利用して、食材から水分を抜くために使用されています。

漬物に塩を使わないと固くて水っぽくなります。
そして漬かりません。

例えばこの甘酢漬け。

20160616_role_of_salt_02

塩もみをせず、つけ汁にも塩を使っていないため大根と人参はほぼ生野菜です。漬物特有のシンナリしつつもパリッという食感がありません。

魚の干物は塩水で残った血と水分を抜くことで臭みを抑えます。減塩干物にチャレンジしたことがあるのですが、鯖を薄い塩水にサッと浸しただけでは、身が水っぽく、血合いの臭みが残ってしまいおすすめできるものではありませんでした。

20160616_role_of_salt_03

冷蔵庫の中にもしばらく臭みが残り大変でした。

②殺菌/防腐効果

「①浸透圧による脱水」は生物の細胞内からも水分を抜き取るため、多くの微生物を死滅させることができます。

「脱水効果」→「殺菌/防腐効果」

細菌といえども水分がない環境では繁殖することはできません。漬物/干し肉/魚の干物など伝統的な保存食に塩漬けが多いのはこのためですね。

例えば寒干し鱈。
こんな感じに塩が浮いている干物です。昔よく酒のツマミにしていました。

20160616_role_of_salt_06

こんなものを塩抜きもせずにサッと炙ってウォッカのアテにしていたのですから、高血圧待ったなしでしたね。今考えると恐ろしいことをしていました。

③発酵調整

微生物は濃い塩水の中では生きることができないとご説明しましたが、中には好塩菌と呼ばれる塩を好む微生物もいます。例えば醤油や味噌をつくる酵母菌です。

醤油や味噌は塩を入れることで雑菌の繁殖を防ぎ、狙った酵母菌だけが繁殖する環境にしているのです。このような仕組みで作られているため、減塩醤油や減塩味噌を簡単には作ることができないのです。「塩入れなければいいじゃん」というのは安直過ぎだったようですね。

20160616_role_of_salt_04

減塩醤油の製造は、普通の醤油を

・脱塩装置にかける方法
・薄めて味を調整する方法

の2種類があります。このため減塩醤油はどうしても値段が割高になってしまうのです。

④変色の防止

りんごを塩水に浸けると変色を防ぐことができます。
これはナトリウムイオンが壁となり空気を遮断することで酸化酵素の働きを抑えることができるためです。

20160616_role_of_salt_05

ちなみに変色を防ぐには空気に触れないような膜を作ればよいだけなので、実は塩水だけでなく、はちみつ水やレモン果汁、ただの水でも効果があるのだとか。

また、野菜を茹でる際に塩を少し入れると緑色が鮮やかになります。
野菜の中に含まれるクロロフィル(葉緑素)の中のマグネシウムがナトリウムに置き換わることで、緑色が安定し鮮やかな色が保たれるのです。

・・・と言われていますが、ほうれん草で試してみましたが違いはでませんでした。
20160616_role_of_salt_07

もっとクタクタになるまで茹でたときに差がでるのかもしれませんね。最近は10秒だ20秒だと超短時間で茹で上げるレシピが主流ですので、塩は必要ないようですね。
すいません、話が脱線しました。

⑤麺にコシを出す

麺類のコシとは主に小麦粉のグルテンのことですが、グルテンは塩を入れると粘弾性が強くなる性質があります。
適度に塩を入れることでコシを調整することが出来るのです。必要な塩の量は小麦の質や季節で変化するため、市販されている蕎麦やうどんの食塩相当量も一定ではないのです。塩分相当量が幅をもたせた記載になっている場合があるのもこのためです。

20160616_role_of_salt_08

なお、パスタにはデュラム小麦という品種が使われていますが、この小麦はグルテンが形成されないという変わった特徴があります。こねてもコシができないため、高圧押し出し成形という方法で麺づくりがされているのです。このためパスタは無塩なのです。

ただし、無塩のパスタは乾麺だけです。生パスタは一般的な小麦が使われることも多いため、うどん同様に塩が添加されています。

同様の理由でそば粉もグルテンが含まれていないため、十割蕎麦であれば無塩です。

一般的な小麦粉が使われている麺には塩が必要になると覚えておきましょう。

⑥パンをふっくらに仕上げる

美味しいパンを作るには麺類同様にグルテンが重要です。グルテンは塩を練り込むことで強くなり粘りがでます。
そして酵母菌(イースト菌)の活性を塩で調整し、適度な炭酸ガスを粘りの強い生地に含ませることで、焼き上がりがふっくらとするのです。
パンの場合は塩は2つの役割があるのですね。

無塩パンが難しいのはこのためで、味気ないだけでなく固い・・・、つまりあまり美味しいものではないようなのです。

なお、イタリアトスカーナ地方では無塩で作られた伝統的なパンがあるそうです。塩の入手が困難になった都市国家時代に生まれたパンで、名前はそのまま「トスカーナパン」。
イタリアのパンを扱っているお店を見つけたら試してみます。

⑦食塩ではないナトリウム

「食事療法の減塩」など私たちは「塩」という言葉を使いますが、実際は体内のナトリウムイオンを適度にしようという試みです。医学や化学の知識が乏しい私達には「ナトリウムを減らしましょう」と言われてもピンときません。摂取の大半が塩ですので、分かりやすいように「塩」と言ってしまっているというのが現状なのです。だから食塩相当量なんて摩訶不思議な言い回しを使っているのです。

さて塩以外のナトリウムはどんなものがあるのでしょうか。

身近なものでは、焼き菓子に用いるベーキングパウダーに重曹「炭酸水素ナトリウム」が含まれています。加熱で炭酸ガスを発生するため、手間のかかる酵母菌の発酵の代わりに使われています。パン作りにベーキングパウダーを使えば食塩は必要ないのですが、ナトリウムが含まれているため、実は一定の食塩相当量があるということです。

重曹は胃薬やカン水にも使われているので注意が必要です。

旨味調味料にはグルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウムなどがあります。旨味成分グルタミン酸、イノシン酸はそのままでは水に溶けにくく調味料として使いにくいため、ナトリウムを結合しているのだとか。つまり、材料に塩が含まれていない味の素でも少量の塩分を摂取したことになるのです。

ナトリウム化合物まで考えると減塩は一気にややこしくなりますね。

・たとえ食塩を使っていなくても、ナトリウムが含まれている場合は食塩相当量として表示するのが食品表示法のルールです。
・しかし「食塩無添加」と大々的にアピールしていても、ナトリウム化合物を添加している可能性があります。たしかに食塩ではありませんが。
・旨味調味料は原材料表示に「アミノ酸など」と書かれていることが多いため、一見するとナトリウム化合物が使われていないように思えます。食塩相当量でチェックをしましょう。
・レシピサイトを見ていると「塩分ゼロ!! 酵母と塩を使わない無塩パン」というようなノリでベーキングパウダーを使ったパンが紹介されていたりします。ベーキングパウダーにはナトリウムが含まれているので注意が必要です。

このように塩は単に味付けだけではなく、いろいろな理由で食品に添加されています。
「なんで塩が入ってるの?」という疑問が少しでも解けたのなら幸いです。

なお、食塩・・・もといナトリウムは人間が生きていくための必須ミネラルです。
減塩を指導されていても、摂取量をゼロにすれば健康になるということではありません。
神経質に考えすぎて食事のたびに怯えてしまうこともメンタルからの不健康を招きます。

なかなか難しいことではあるのですが、何ごとも「適度に」ですよね。

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です