脳卒中患者でも運転がしたい! 運転を再開するための予備知識(その2)

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この記事は

●脳卒中患者でも運転がしたい! 運転を再開するための予備知識(その1)

の続きです。

後半いってみましょう。

9.てんかんや意識喪失の経験がある人は大型や2種の運転は不可

てんかんや意識喪失の経験がある人は、基本的に大型(トラックなど)や2種免許(タクシー/バスなど)の運転はできません。

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大型車や乗客を乗せて長時間運転をする職業運転手のための免許区分ですので、万が一運転中に再発した場合は重大事故に直結してしまいます。ニュースでご存知のとおり、たびたび事故が発生していますので諦めるしかありません。

それ以外の免許区分なら安全ということはありませんが、患者の社会復帰も考慮してここを線引きとしているようです。

運転免許試験場にお話を聞いた限りでは

過去にてんかんや意識喪失を経験した人は大型及び2種免許は基本的に許可しない。ただし、判断が難しい申請は運転免許本部にて最終判断が行われるため、運転免許試験場で「全てのてんかん経験者は不可」と断言をすることはしない。最新の法改正/法解釈や症状の程度、医師の判断で変わるため、運転免許本部に相談をしてみてください。

との回答でした。
可能性はゼロではないが、限りなくゼロに近い。そんなニュアンスを感じるお話でした。

日本てんかん学会のWebサイトでも

てんかんが完治したと判断された場合には全く制限は受けません。
服薬中の患者さんの場合でも、発作が過去2年以内に起こったことがない場合で、ある条件 (服薬を変更しない、怠薬しないなど)を満たせば運転免許取得が可能です。主治医の診断書または日本てんかん学会認定医による臨時適性検査を受ける必要があります。ただし、運転を職業とする免許は取得できません。

「運転を職業とする免許は取得できません。」 つまり、大型と2種の運転再開はできないと解釈できます。

しかし、日本てんかん協会のWebサイトでは

■ てんかんのある人は、大型免許と第2種免許の取得は控えてください。
※運転を主たる職業とする仕事も、お勧めできません。
※5年以上発作がコントロールされていて服薬も終えている場合に運転適正があります(日本てんかん学会)

「大型免許と第2種免許の取得は控えてください。※運転を主たる職業とする仕事も、お勧めできません。」という表現になっています。

すこしニュアンスが異なっているのがお分かりになると思います。

社会問題化する重大事故を受けて急速に法整備が進む中で、患者の社会復帰の促進も考慮していかなければいけないという難しい問題です。それぞれの立場の意見があり少々混乱をしているようにも思えます。皆様がこれを読んでいる時点でも状況が変わっているかもしれません。該当してしまう方は常に最新の情報をチェックしましょう。

そんな裏話を踏まえつつ、ここでは大型と二種は運転不可としています。

10.医師は「運転は不可」とは言えるが「乗ってよい」とは言えない

これは患者だけでなく医師も勘違いしている場合があるのですが、最終的に運転の可否を判断するのは公安委員会です。医師ではありません。
ただし、公安委員会は医学的な症状や患者の嘘を見抜くことが出来ません。このために医師の意見を診断書という形で仰ぐという協力関係になっているのです。

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公安委員会は適性検査と医師からの診断書、この双方を根拠に最終判断をしています。

このため、公安委員会の適性検査で「問題なし」と判断されても、医師の診断書で「運転は控えるべき」との助言を受ければほぼ運転再開は出来ません。
つまり、医師が患者の症状をみて「運転はダメですよ」と言っている限り、間違いなく運転適性はなしと判断されます。少々ややこしいですが、「運転の可否は公安委員会が判断するものだから、医師がダメと言っているけど無視してよい」という解釈は成立しません。

逆に医師から「運転に問題なさそうですね」という会話があったとしても、運転免許試験場で運転適性を確認していないままでは合法的とは言えません。医師の「乗ってよい」だけでは運転は出来ないのです。

11.まずは医師に相談を

つまり医師が「この患者さんは運転を控えるべきとは言えない」と考えていないかぎり、運転は許可されないことになります。

運転再開を望むなら、まずは医師にその旨を相談することが全てのスタートとなります。

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医師から「運転再開、チャレンジしてみましょう!」というポジティブな反応が得られないままことを進めようとすると、結局は無駄足になるのかもしれません。

12.診断書の用紙は公安委員会から入手する

運転再開に必要な診断書には決まった様式があります。
診断書の用紙は各都道府県の公安委員会ごとに用意されており、それを医師に手渡して書いていただくことになります。用紙は運転免許試験場か特定の警察署で入手してください。運転免許試験場に問い合わせると入手可能な警察署を教えてくれたり、場合により発送してくれることもあります。

この診断書は疾患ごとに内容が異なっていますので、私達脳卒中患者であれば「一定の病気などに関わる診断書の脳卒中用を入手したい」と伝えましょう。

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東京都公安委員会の脳卒中用の診断書はこんな内容です。
一度読んでみてください。非常に難解な言い回しを用いているため、失語症でなくとも頭を抱えてしまうでしょう。このためか、東京都の運転免許試験場では医師向けに補足を追記したガイドライン(A4で2枚)を渡してくれました。もし、ガイドラインや記入例があるのであれば一緒にもらっておきましょう。

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●参考)診断書ガイドライン(東京都公安委員会用)

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同じ目的の書類ではありますが、都道府県ごとに内容が若干異なるようです。そして今後も法改正に合わせて内容は逐次更新されていくことでしょう。このため、お住まいの都道府県の最新の用紙を入手しましょう。ネットで拾ったものを印刷して使用してはいけません。

診断書については1点だけ注意が必要です。

診断書を医師に依頼してもすぐに受け取ることは出来ません。
一般的には2週間程度かかりますが、非常に多忙な医師の場合は数ヶ月もかかってしまう事例もあるようです。免許更新など期限がある場合にはそれを踏まえて早めに行動を起こす必要があります。運転免許試験場で話を聞いた限りでは、診断書の遅れにより免許更新が出来ないというトラブルがかなりの頻度であるようです。
「診断書には時間がかかる」これは必ず覚えておいてください。

13.この手順が医療サイドで周知されているとは限らない

リハビリ専門の病院なら経験は豊富でしょうが、小さな病院や救急病院では運転再開や免許更新に関する医師の役割などが理解されていない場合があります。平成26年というごく最近に改正された内容も多いので多少はやむを得ないのかもしれません。

また、運転を許可すると事故の責任を医師に追求されるのではという思いから判断を避けたがる場合もあるでしょう。しかし、正しい見解で診断書を書いていれば医師が責任を問われることはありません。
あくまでも運転を許可するのは公安委員会であり、医師の診断書をその判断の材料にしているのです。このため、診断書の用紙には「医師として運転を許可する」ではなく、「医師として、運転すべきではない、とは言えない」という回りくどい表現になっています。つまり、公安委員会は医師に運転の許可や全ての責任を求めているわけではないのです。

しかし、ひとたび担当する患者が重大事故を起こしてしまうと世間の厳しい目や不信感は医師本人にも向かうのが実情です。重大事故の起因になり他の人を傷つけてしまうことを避けたいと思うのは医師として当然でしょう。

ただし、医師が必要以上に後ろ向きなスタンスを示すのであれば、障害者の運転再開に長けているリハビリ病院に相談することも必要かもしれません。

道路交通法は頻繁に改正されています。そして医師といえども万能ではあありません。もし主治医が運転再開に関して詳しくないようであれば、時間的な猶予を与え、最新の法改正や所属する学会の方針を調べるようにうまく導いてあげてください。
もし揉めるようであれば、運転免許試験場に適性検査に関する部署がありますので相談をしてみましょう。親切に相談に乗ってくれるはずです。

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ただし、医療のプロである医師と免許のプロである運転試験場の間を、素人の脳卒中患者自らが取り持つというやり方は、私はあまり賢い方法だとは思いません。場合によっては病院と運転試験場で直接話をしてもらうことも必要だと思います。

なお、医師と公安委員会に対して喧嘩腰になるのは絶対に禁物です。脳卒中などの脳疾患には感情をコントロールすることができなくなるという後遺症もあります。怒りの感情の抑制が出来ない人は運転には間違いなく不向きです。このため運転再開に対しては逆効果になるでしょう。
そもそも、どちらも怒鳴りつけることで判断が変わるような組織では困りますよね。

予備知識はここまでです。
前置きが非常に長くなってしまいましたが、これらを踏まえると脳卒中患者の運転再開の手順が理解しやすくなります。
では、早速見ていきましょう!!

●脳卒中患者が運転再開をするための手順

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コメント

  1. フジッコ より:

    こんばんは。
    この話題、気になっていたのです!
    今年、免許証の更新があるのです。
    是非、参考にしたいと思ってます、色々教えてくださいね。
    ちなみに、
    私の場合、退院時医師から運転OKと言われて、運転再開してるのですが
    こんなややこしい?手続きある事をameoさんのブログで知りました。
    8月なので
    着々と準備したいと思います。

    • ameo より:

      フジッコさん、こんばんは。

      いざ調べてみると仕組みが複雑で私も驚いています。
      しかし、医師にも患者にもあまり徹底されていないのが現状です。

      退院時に医師から運転OKと言われているのであれば、既に運転適性は十分にあるのではないでしょうか。
      もしそうであれば、無理に更新期限まで待たずに適性検査を受けてしまうことをオススメします。
      今の状態で事故に遭遇してしまうと面倒なことになるかもしれません。
      私の場合もそうでしたが、運転免許試験場に問い合わせると適性検査が終わるまで絶対に乗らないことを約束させられます。
      実はそんな危うい状態なのです。
      問題が無いのであれば早めに片付けてスッキリしてしまいましょう。

      記事は「運転再開の手順」、そして「私の適性検査体験記」と続く予定です。
      そちらも是非参考にしてくださいね。

      • フジッコ より:

        おはようございます!
        体験記楽しみにしています。
        普通に運転出来ればOKですか?

        早速
        更新手続き、動き出さなきゃと思います。

        • ameo より:

          おはようございます。

          フジッコさんの状態がわからないのでなんとも言えないのですが、早々に医師が運転OKと判断しているのであれば、かなり状況は良いように思います。
          主治医の先生に運転適性検査を受けるという目線で確認してもらいましょう。

          私も(自称)運動能力は問題がないと言えるレベルでしたが、面接の結果、主に視野欠損と判断力を確認する高次脳機能障害の検査を受けています。
          脳の疾患の場合はどこまで自覚ができているかという不安を捨てきることが出来ませんので、医師と家族の意見も必ず聞きましょう。

          続きの記事は、しばしのお時間を。。

          • フジッコ より:

            早速のお返事ありがとうございます!

            退院時の医師はOKだったのですが
            今通院しているかかりつけ医は
            『えー。いいのかなあ運転しても』
            と、おっしゃっていて、そこが悩みどころです。

            まずは
            公安委員会のHPチェックからですね。

            ameoさん
            何時もありがとうございますm(__)m

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