運転再開をチャレンジする人に読んで欲しい本 「脳卒中・脳外傷者のための自動者運転」

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先日記事にしたように、私は運転免許の更新を条件追加無しで行うことができました。しかし、障害者の運転再開に関しての手順や現状についての情報は少なく、いくつかのトラブルを乗り越えての取得となりました。その経験を踏まえて、脳卒中経験者が運転を再開する手順や注意点をまとめています。

私は後遺症がほぼ解消できているため独学でなんとかなりましたが、後遺症を抱えた状態で適性検査に合格するのは容易なことではありません。出来る限りの準備をしておかなければいけません。

そんな方に役に立つであろう本を見つけました。

「脳卒中・脳外傷者のための自動者運転」(三輪書店)

運転再開を望む脳障害者の「もっともっと詳しく知りたい!」に応えてくれることでしょう。
今回はこの本をご紹介します。

「脳卒中・脳外傷者のための自動者運転」(三輪書店)

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「脳卒中・脳外傷者のための……」と銘打たれてはいますが、直接患者向けに編集された本ではありません。医師やリハビリセラピストなど脳障害の患者に接する医療関係者のための本です。このため一般人では理解できない医学的な内容も多々ありますが、それを置いても私達の多くの疑問点・不安点を解消してくれることでしょう。

目次

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第1章 現状とニーズ
第2章 脳卒中・脳外傷の疫学
第3章 交通事故の実態
第4章 運転に求められる身体機能
第5章 運転に求められる高次脳機能
第6章 運転に際して留意すべき疾患
第7章 薬剤と自動車運転
第8章 運転再開に際して求められる法的知識
第9章 運転再開に際して知っておきたい自動車改造の知識
第10章 ドライビンブシミュレーター(DS)による運転評価
第11章 運転とニューロイメージ
第12章 運転再開に向けた東京都リハビリテーション病院の取り組み
第13章 諸外国の障害者運転事情
第14章 臨床における支援のあり方
第15章 運転可否に関する臨床医の判断
第16章 Case Study
第17章 Q&A

内容概略

内容を簡単に説明しておきます。

第1章 現状とニーズ

患者に運転をしたいという思いがあっても運転の可否や手順がわからない。医療関係者も障害者の運転再開/免許取得に関しての知識や経験が少なく、さらに運転可否の判断も極めて困難。このため、運転が出来る能力がありながらも運転を諦めてしまう患者もいる。そんな現状をデータとともに解説しています。

私も診断書を書いてもらえないなどのトラブルがありましたが、特別なことではなかったようです。障害者の運転再開に関しては受け入れ体制が整っているとは言えないのが現状です。つまり患者はそれを踏まえた上でチャレンジするという心構えが必要ということです。

第2章 脳卒中・脳外傷の疫学

脳卒中/脳外傷の患者に残る後遺症の特徴が説明されています。

第3章 交通事故の実態

日本における交通事故の傾向と分析についてまとめられています。
脳障害者についてではなく、一般的な交通事故の年次/年齢/要因/法規制などの統計データを分析しています。

第4章 運転に求められる身体機能

まずは法的に求められている身体機能についてまとめられていますが、道路交通法では「運転に支障がない」というあいまいな表現に終止してしまいます。
このため「運転に支障がない」の具体的目安として、運動機能/ADL/失語症/視野障害/年齢などについて、運転が可能と判断すべき目安が提示されています。

注意が必要なのは、この基準はあくまでも目安の一例であり、どの病院や運転試験場でもこの通りに判断されるかどうかはわかりません。

第5章 運転に求められる高次脳機能

ある脳梗塞患者の事例をもとに、運転に必要な高次脳機能の程度をスクリーニング(洗い出し)する方法が説明されています。
ドライビングシミュレーターを活用することで認知や判断など評価し難い高次脳機能を明確にしようとする試みです。

第6章 運転に際して留意すべき疾患

脳障害に関する疾患が運転に与える影響についてまとめられています。
特に注意すべき疾患として、高血圧/糖尿病/アレルギー性疾患/失神/睡眠障害/てんかんを詳しく解説しています。そしてもう一つ重要なのが、乗車前の「今、疾患がうまくコントロールできているか」という確認です。

第7章 薬剤と自動車運転

運転に影響をおよぼす代表的な薬についてまとめられています。
運転に影響がでる薬を知るだけではなく、効き目と副作用が上手くコントロールできているかを自問することも重要です。

第8章 運転再開に際して求められる法的知識

2002年に改正された道路交通法を中心に説明がされています。
この改正では「特定の疾患患者は自動車運転を許可しない」という欠格事由が廃止されるという大きな変化がありました。これにより患者は特定の疾患だからといって一律門前払いをされることがなくなり、個別に判断されるという仕組みに変わったのです。
この章でも法的に必要な身体の機能と、代表的な疾患に対する運転可否を見極めるポイントが提示されています。

なお、本書の初版は2013年6月ですので、2013年に改正された「一定の病気などに関わる質問票の義務化」などについては軽く振れる程度で詳しい解説はありません。これ以降の道路交通法改正については自分で補完する必要があります。

第9章 運転再開に際して知っておきたい自動車改造の知識

福祉車両メーカーによる改造についての詳しい説明がされています。
具体的にどのような改造が可能なのかを知ることができます。

私も福祉車両メーカーの方と直接お話をしたことがあるのですが、脳卒中の後遺症が片麻痺などの運動能力だけであれば対応する改造自体はさほど難しいものではありません。そのことが認知されていないため、調べる前に運転を諦めてしまう人が多いそうです。

第10章 ドライビングシミュレーター(DS)による運転評価

運転可否を確認するために有効なドライビングシミュレーターについての説明がされています。
運転には運動能力だけでなく、認知や判断が複雑に絡む高度な機能が必要です。ドライビングシミュレーターでより運転に近い環境を作り出すことで安全に評価をすることができます。

患者が自分の問題を認識できずに「運転は何の問題もなくできる」と誤認している場合にも、自覚させるために有用とのことです。脳卒中を経験してしまうと、私は自分の問題を本当に認識できているのだろうかという不安が常につきまといます。患者から見れば「外から見た自分の状態を明確に知ることが出来る」というメリットもあるということです。

第11章 運転とニューロイメージ

運転をする際に脳のどの箇所が活発に動いているかがまとめられています。
健常者と患者の脳の活動を比較することで運転適性を探る研究を解説しています。

第12章 運転再開に向けた東京都リハビリテーション病院の取り組み

この本の執筆に関わっている「東京都リハビリテーション病院」で行われている運転再開への取り組みが説明されています。
この病院では患者の運転再開に関する研究会が設置されており、ドライビングシミュレーターの活用や自動車学校との連携、患者向けガイドブック作成など前向きな対応がされています。

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この取り組みのなかで運転が再開出来た方2名と出来なかった方1名の事例も挙げられており、その理由も解説されています。

●研究会のWebサイト

障害者自動車運転研究会
http://www.reha-drive.jp/

こちらの研究会がこの本のベースになっているようです。大変参考になりますので目を通しておいてください。

いろいろ苦労した身としては羨ましい限りです。是非この活動を全国に広げていただきたいと切に願います。

第13章 諸外国の障害者運転事情

日本以上に自動車社会である欧米では障害者の運転がどのように扱われているかがまとめられています。

第14章 臨床における支援のあり方

運転再開に際しての手順と注意点について説明がされています。
具体的にどのような手順で運転再開をするのか、どのような点に注意して患者を運転再開に導くのかがまとめられています。

第15章 運転可否に関する臨床医の判断

運転再開に対しては医師の「運転を控えるべき、とは言えない」という診断結果が必須となりますが、運転可否の判断は困難を極めるため正しく行われていない現状も見受けられます。そんな悩める医師に対しての判断指針がまとめられています。

第16章 Case Study

運転再開が出来た患者2名の後遺症と評価、そして運転再開後の経過など。

第17章 Q&A

患者や医師からのよくある質問について。

読んでみて感じたこと

この本では脳疾患患者の運転再開についての問題点と指針が提示されており、医療関係者にとって有用な情報となることでしょう。
私達患者としても、この本で運転を再開するために何をすればいいのかわからないという状況を脱することが出来るでしょう。

しかしその反面、医療サイドから見ても運転再開へのシステムや判断が曖昧になっている面も多い、という実情もわかりました。現実問題として病院や医師によって極めて大きな差があるということです。

運転を再開したい私たちはそれを踏まえた上で上手く立ちまわる必要があります。医師が詳しくないようであれば角が立たないように情報を提供し、必要があれば運転再開を得意とする病院を頼るなどの臨機応変な対応が求められるのです。障害者の運転再開は病院に頼りっきりの医療サービスとは勝手が違うのです。

しかし、複雑で高度な機能が求められる自動車の運転が出来るのですから、この程度の調整や根回しは皆さんでも出来るはずです。それは一昔前のようにナビがない車で目的地に向かうようなものです。今ある情報をフルに活用し、目的地である「運転再開」に向かって進みましょう。

この本の入手先

対象とする読者が極めて限られたレアな本のため、おそらく本屋さんの棚にはないでしょう。ネット通販や本屋さんで取り寄せてください。

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脳卒中・脳外傷者のための自動車運転
(三輪書店)

<監修>
林 泰史
米本 恭三

<編集>
武原 格
一杉 正仁
渡邉 修

商品コード(ISBN) 978-4-89590-442-1 C3047
NDC分類 537.8
定価:3400円(税抜き)

ちなみに大きな声では言えませんが私は図書館で取り寄せました。
同じ都道府県内であれば他の図書館から本を取り寄せることも可能ですが、よほど図書館が充実している都道府県でないと1冊も所蔵していないというレア本です。あっても冊数が少ないため、順番待ちで手にするまでに時間もかかります。そんなこともあり、私も免許更新が終わったこの時期に手にしているのです。そして借りれるのは2週間だけ。もう一度読み返したかったのですが残念ながら時間切れです。

お値段は3400円(税抜き)と医学専門書としては非常に安い価格ですので、運転再開が「チャレンジ」となる方であれば購入して熟読することをオススメします。全ての本に言えることですが、数千円で残りの人生が楽しくなるキッカケをつかめるのであれば安いものです。

最後に

自分で運転が出来るようになると生きていくための買い物だけではなく、仕事やレジャーなど生活の質を1段底上げする人生の転換点となります。
私たちはいろいろな問題を抱えてはいますが、だからと言って幸せになるために努力することを躊躇する必要はありません。
ちょっと本気を出して運転再開、目指してみませんか?

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